天国か地獄か
目が覚めたらそこには
エスカレーターが二つ並んで作動していた
上行きのエスカレーターは新品同様の輝きを放っており
下向きのエスカレーターは廃品とまではいかないが廃れていた
何だろうここは、と動揺しながら周りを見ても殺風景が無限に続く、唯一発見があるのだとしたら、壁の色(壁かどうか分からないけど)だろうか。
上りエスカレーターの側の壁が白
下りエスカレーターの側の壁が赤。
まじで何も無いこの空間に俺は動揺を隠せない。 鼓動が次第に高鳴っていくのを感じながら見過ごした場所を調べる。
エスカレーター。
そう俺はただエスカレーターを見ただけで実際に触れてもいないし、乗ってもいない。
息を呑みながらエスカレーターに近づく。
上行きのエスカレーターを覗く、
無限に続くエスカレーター。
終わりが見えない上り。
下向きのエスカレーターを覗く、
こちらも同様、無限に続くエスカレーター。
終わりが見えない下り。
「あーれー、 目覚めるの早えーなー。
予定だとあと5分は目が覚めないつもりだったんだけどなー」
突然の人の声に俺の体はビクつく。
(情けねえ、 もう高校3年なのに)
でもここで俺はビビってないと自分に言い聞かせる
くるりと振り返り、言葉を発した者を見る。
そして先程の俺の言葉を修正しよう
突然の"化け物"の声に俺はビクつく。と修正
言葉を発した者は、
可愛らしい女ではあったのだが。
折りたたまれた赤黒の羽
お尻付近から生えている黒色の短い尻尾。
コスプレではない、マジ物の悪魔を俺は生まれて初めて見た。
「なにジロジロ見てんだよ。 殺すぞ? って言うかもう死んでるんだけどね」
何か今一番重要な事を言われたような‥‥
‥‥
あ!!
「死んでるんだけどね」
畳み掛けてきやがった。
ここで俺は初めて言葉を発する。
「し、 死んでるってどういうこ――」
「だるぅ」
「え?」
だるぅって、
真剣に聞いてるのにだるぅって。
「あんたが死んでいる事説明するの面倒くさいんですけど、 さっきも3人一緒に説明して疲れたんだけど」
「そ、 そんなもん知るか、 が、 学校の先生だって同じ授業をクラス別に何回もやらなきゃいけないんだぜ」
(ビビってるからうまく話せねえ!)
「なにそれ、 私そういうの出来ないわ〜」
そう言いながらさっきの俺とは逆に彼女が俺をジロジロ見てきた
何か怖いな、悪魔にジロジロ見られると。
「てか、あんたさー」
「な、 なんだよ?」
「なんで私を見てビビらないわけ?」
「へ?」
「だーかーらー、 なんで私の姿を見てビビらないわけ?」
「まぁ、多少はね? 多少はビビってるけど、 多少は」
(すいません本当はめっちゃビビってます!)
「へー、 まあどうでもいいや」
自分で聞いといてどうでもいいやって‥
自分勝手すぎるよ、彼女。
「あ、 ここって一体なんなんだ?」
「死んだ者を地獄か天国か、 そのどっちかに導く場所」
「あー、 アニメで見た事あるやつかー」
「あんたは10点中‥‥4点だから下に下がってもらうよ」
「地獄行き決定!?」
「いやここは中間だよ。」
つまり俺はざっくり言って4点。
詳細はこのエスカレーターを下らなきゃ分からないと言う事だった。
そして俺は彼女に別れを告げ、
無限に続く下りエスカレーターを下る。