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もうすぐ深夜零時を迎える。
僕は冷蔵庫の前で体育座り。
静かに扉を開け、それを取り出す。
まるで赤ちゃんのお尻のように柔らかく、
いい色になった桃。
なんとなく今日が終わる瞬間に食べたかった。
僕は皮を剥く。
ナイフはいらない。
手でスルスルと剥けるから。
特有の爽やかな香りを放ち、
瑞々しい果肉が顔を出した。
最初は正体不明の奴だったが、
もうここまでくれば
『桃』
以外の何物でもない。
僕はゆっくりと口を近付け、
ガブリとかじった。
〈うまい!〉
口の中いっぱいに頬張った。
〈うまい!〉
休まず一気に食べてみた。
〈うまかった!〉
こうして後に残ったのは、
薄い皮と丸い種だけだった。
結局あれは何だったのか?
わからないまま終わりを迎えたが、
それでよかったんだと思う。
僕の人生は今までも、
そしてこれからも、
たぶんそんなことの繰り返しなんだろう。
明日は仕事だ。
僕はベッドに潜り込み、
満足感の中、
深い深い眠りに落ちていった…
翌朝、
―― 林檎がある! ――