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ピーチ  作者: eight-moon
4/7

4

目覚ましよりも早く起きた朝。

今日は出勤時間までたっぷりと余裕があるから、

きちんと朝食を作ることにした。

と言っても、簡単な物だけで、

シリアルに牛乳、卵を割って焼いただけの目玉焼き、

それにフルーツ…

やっぱりそこに桃はある。

いっそ食べてしまおうかとも思ったが、

僕は食べ頃にこだわる性質で、

どうしてもそれはできなかった。

だからフルーツは、

お隣さんからもらったオレンジにした。


新聞を読みながら、久々にゆったりとした朝食。

近所の犬が散歩に連れて行けと鳴いている。

僕は牛乳を注ぎ足そうと冷蔵庫を開ける。

新聞キジを読みながら犬の声。

そして目の前の桃。

それらの情報は、僕の頭の中で

『桃太郎』

へと変化した。


〈桃から生まれた桃太郎。お供を連れて、いざ鬼退治に!〉


そう言えば、幼稚園の時の学芸会で

桃太郎の劇をやったことがある。

僕の役は、なんと主役の桃太郎!

後にも先にも、何かの主役を務めたのは

その時だけだったな。

だけど、なにぶん幼い頃の話で

あまり詳しくは覚えていない。

ただ、母の話では

僕がかなり恥ずかしい失敗をしたという。


それは、あの童謡でも有名な場面。

桃太郎がお供にきび団子を渡す時のこと。

そもそも、幼稚園の先生達にも

問題があったと思うんだ。

普通は小道具を使うだろうに、

リアリティーの追求か、

何を思ってかは知らないが、

きび団子には本物の饅頭を使っていた。

で、僕はそれを渡すどころか

当然の如く自分で食べてしまった。

そこで芝居は止まるわ、

周りの子達は泣き出すわ、

会場は大爆笑するわで、

先生達は慌てて幕を下ろした。

その後、何とか無理矢理に続きをやったらしいけど、

母はもう見てられなくて外に出てたらしい。


そんな愉快な出来事を覚えていないなんて

もったいない、もったいない。

と、少々落胆してしまったところで

時計を見ると、出勤時間が迫っている。

余計なことを考えていたせいで、

今日もまた遅刻ギリギリになった…

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