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―――桃がある!―――
冷蔵庫の中に桃が一つ入っている。
僕は一人暮らしで、ここ最近買い物に出た覚えはない。
では、この桃はいったい何だろう…?
とりあえず、思いつく可能性をいくつか挙げてみることにしよう。
其の一 僕の母親、それとも父親、もしくは妹が買ってきて、
僕の留守中に置いて帰った。
――あり得ない。ここはアメリカ、実家は日本。
気軽に遊びに来れる距離じゃない。
しかも、僕に何も言わず、顔も見せずに帰るなんて、あり得ない話だ…
其の二 僕の彼女が買って来てくれた。
――其の一よりあり得ない。なぜなら今、僕に彼女はいないから…
其の三 友達のデビットが、僕を驚かそうとこっそり置いて行った。
――これは少しだけ現実味のある可能性だ。
彼は悪戯好きだから、今頃驚く僕の姿を想像して笑っているのかもしれない。
だけど、何故に桃?
僕は驚くよりも悩んでしまっている。
それに考えてみると、彼は僕の部屋の合鍵なんて持ってない。
あ、今思い出したけど彼は確か、一週間前からカナダへ出張中だったはず…
其の四 宇宙人が…
――誰かが置いて行った可能性はなさそうだ。