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《ZeRo-現実の中の”夢”》-1

 限り無く続く青空は陰りを見せず、澄んだ青色をより一層に際立たせている。

 ……そう感じるのはきっと、8月序盤にありがちな気候のせいでもあるのだろう。

 ギラギラと照りつける太陽が地表を焼く。ついでに俺の肌も焼く。ただ立ち止まってじっとこの日光を受けていたのなら、俺は今頃乾涸びていたのかもしれないな。

 頭上には青空がだだっ広く広がっていて、時折雲が日を隠す時以外は、太陽が地表をイヤになるほど眩しく照らしている。

 まぁ、回りくどい言い方をやめるなら、要するに”天気がいい”。

 太陽が照っていて単純に気温が高いから、俺の中で『夏だ!』という雰囲気が勝手に強くなる。

 きっと夏だから、進路左側に広々と広がる海もまた一層に青々と見えた。

 海岸沿いに長々と続くこの道から海を眺めると、水平線まで空と海だけがずっと続いている。

 だからこそか、空の大きさがいつも以上に際立ち、広大な空から地上に光を放つ太陽の輝きも特に強く感じられた。

 俺は少しだけ愛車のアクセルを強く捻った。目前の乗用車を追い越す為だ。 

 やはりバイクは良い。車とは全く違う臨場感のあるスピードを体感させてくれる。

 趣味として走り回る分には絶対バイクの方が楽しいに違いないと、俺はいつも思っている。

 また、バイクに乗っているからこそクソ強い日光に当てられていても肌が焼けずに澄むんだ。

 少なくとも熱さは感じられない。それ以上に、運転の楽しさの方が強く感じられた。

 ……うん。今回の外出は総じて”悪く無い”感じだ。

 俺は夏の気候を肌で感じ、結構満喫していた。

 潮風は暖かく、心地良く肌を撫でる。

 夏の陽気が健在である限り、海沿いで吹きすさぶ風が俺の肌を鋭く刺すような事は無い。

 これが仮に冬だったのなら、潮風は氷の様に冷たく俺の肌を引き裂こうとしていただろう。

 ……なにせヘルメットを忘れちまったからな。

 正直風が強過ぎて息をするのも苦しい。

 これが冬だったらと思うと、ぞっとしないな。

 ……さて、それはそうと俺がヘルメットを付けていないのには理由がある。

 え? バイクを趣味に持つ俺が(・・)ヘルメットを忘れるわけないだろう。

 忘れたのは俺じゃなくて、すぐ後ろに二人乗りしてるこの女だ。

 ”危ないから”俺の分のヘルメットを譲ってやったんだ。

 昔からせっかちで忘れっぽい性格をしたヤツだが、まさか言い出した自分が持ち物を忘れるなんてなぁ……。


 後ろの座席に腰掛ける『末次(すえなみ) ツバメ』は、世間一般的な表現で表すなら俺の幼馴染に当たる人物だ。

 考えてみればコイツとは幼稚園から大学までずっと同じ進路だったってんだから、まぁ縁が深いんだろう。

 コイツが『海に行きたい!』なんて言わなかったら俺は今頃部屋でプラモデルでも作っている。

 先程も言った通りだが、俺は総じて今のこの状況に充実感を感じているから、コイツには多少の感謝はしてやってもいいかもしれない。

 夏休み中何処にも行かないってのも大学生としてアレだからな。外に出る切っ掛けをくれた事には感謝しよう。

 ……だが、ちょっとスピードを出す度に文句を言うのはやめて欲しい。

 バイクはスピードを出してこそバイクなんだからな。先程乗用車を追い越した今、前に車は居ない。また海沿いの道は”スピード出して下さい”と言わんばかりに直線的に長々と続いている。

 いつもならアクセルグリップを強く捻るであろうこのシチュエーションなのに、思い止まらなきゃならないのは非情に歯がゆい。

 ……まぁ、たまにはゆっくり走るのもアリか。

 太陽の光を反射する海の水面を見遣って、俺はそう納得した。

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