お仕事その24 敵わない
「なるほど。共闘というわけですか」
その一言が元オールバックの姿を変えた。メキメキという謎の音と共に、骨格が人間のものからそうではないものへ変化していく。変化している最中のオールバック野郎の下半身はいまだ人間と同等の骨格を保っている。しかし、上半身は大きく異なっていた。
両肩から両手にかけて肥大化し、首元からは二、三本のケーブルが上へ延びその内の一本の先端に頭があった。残りのケーブルには目のようなものが先端に装着されている。
そして、オールバック野郎は言う。
「ふはは、この体は用済みなんですよ。だからこそ、こんな姿にもなれるのです」
誰も説明を求めていないのに理由を説明してきた。
もはや、オールバックのときの面影は無く、新たに上半身マッチョになったのだ。つまり、パワーアップしたのだ。オールバックよりもマッチョの方が確かに強い。
「……関係ないです」
「強くなった瞬間が一番チャンスなんだよなぁ。一番隙のあるときだもん」
「だからどうしたんです? 攻撃してくるべきですよ?」
そうだ。挑発されていようが何でもいい。挑発は相手の力を見切り、自分の能力がそれ以上であると認識したときにするものだ。それを打開するには――。
「お前が思ってる力以上でつぶしてやるよ」
「同感です」
「その必要は無い」
おいおい、いいところ持ってくんだな。
次の瞬間、上半身マッチョ野郎の体は何者かの腕が貫いていた。貫かれた場所から上半身マッチョ野郎の体に沿って垂れていくオイル。そして、貫いた本人が語り出す。
「貴様が私に敵うとでも思ったのか」
「かっ……ふ、ふふふ。そろそろ起きると思ってましたよ。それに、敵うだなんて思いませんよ。あなたの体を利用したんですから、それほどの価値がある人、いや、機械に勝てるわけが……」
「ハハハハハッ! 面白いッ! 貴様ごときが私の体を使うとッ!?」
突然笑い出したそいつは、もう片方の腕で貫かれている上半身マッチョの体をさらに貫いた。何度も、何度も。もはや、なんだか分からないぐらい。
「冗談は頭だけにしろ。それで」
そいつは最初に貫いた腕から上半身マッチョだった塊を引き抜くと、まるでゴミのように部屋の隅に投げ飛ばした。そして、俺と白い人形の方を睨んできた。
「てめぇ、記憶にねぇな。何もんだ? 死んどくか? それが一番いいだろうな」
どういう経緯かは彼女の中でしかわからないが、俺は獲物になった。
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