お仕事その18 決意
おそらく電気が一括で管理されているのだろう。
天井にぶら下がる電球は全て点灯し、建物の中を明るく照らしている。必要なところだけという訳ではなく無駄なところまで明るいところを見ると、全てに電気が「まだ」通っていると考えるべきだろう。俺が破壊作業を依頼されたときに、それが破壊を目的としていたのかどうかが疑問に残っていた。
「傭兵がそれ以上を考えるのはいまいち気乗りはしないけれど、何か別の目的がありそうだな」
砲剣を引きずりながら、建物の奥へ進んでいく俺。相変わらずひどい異臭がしながら、何か事故でもあったのかと思うほど崩れに崩れた資材たち。道のりの途中、進行方向に何度かそれらが現れるので、砲剣で薙ぎ払っていく。
けっこううんざりする。
「またかよ」
繰り返される撤去作業をいやいや行い、資材を薙ぎ払ったその時――。
「邪魔者、ですか」
目の前に白い人形のようなものが現れた。
突然の攻撃に砲剣でかろうじて受け流したが、それでもいまいちだ。確かに、あの白い人形は鋭い刃物と化した両腕を俺に向けていた。砲剣の刃で受け流したはずだが、俺の右足には切り傷が付いていた。
一体なんだ、何で攻撃した?
「突然現れて人を邪魔者呼ばわりか。この街は本当出会い頭に失礼な奴が多いな」
「私は、ここを任され、あの人を、守ると命じられ、生きてきた」
白い人形はふらふらと立ちながら、無い口で言葉を話し始めた。片言だが。
誰かに命じられた番人のような者だということか。何を守るためだろうか。謎が多いが、ここで無駄な戦闘は行いたくない。
「別に邪魔をするつもりは無い。ここに変な前髪後退気味の男が来なかったか?」
「前髪、後退? コードネーム、ボス、のことか?」
「ボス? そう、たぶんそいつのことだ」
コードネームがボスって子供の遊びかよ、あの男。
「ボス、奥へ行った。私、ここを任された、誰も通さない」
「ボスに命じられた人形か」
その言葉が何のスイッチを入れたのか、白い人形の構えが変化した。右腕を左腕よりもやや前に出し、肩幅ぐらいの間隔で両足を開く。どの角度から見ても戦闘スタイル、いや戦闘モードに移行したと考えられる。
そして、白い人形はこう言った。
「違う。命じた、ボスじゃない。私は、私の意志で、彼女を、守る。その決意、とくと見るがいい!」
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