闘技場?
男を戦闘不能にしてから2時間。
俺は、砂漠の終わりに立っている。100M程先には、町が見えていた。ここまで、歩き続けて、暑さで意識は朦朧とし、喉は干からびて声も掠れてしまう。
「やっ……と、つ……いた」
フラフラと歩き出す。背中に背負っている、光明鎌が重く、秦の体にのしかかる。足取りが重い。目の前には霞がかかっているように思えた。人は、水分の不足でここまで、衰弱するのか。
やっとの足取りで町の入り口に立つ。
「水……」
辺りを見回す。わりと、活気のある町だった。道具屋、武器屋、防具屋、その他にも、露店や、フリーマーケットのようなものもある。
秦は目を目まぐるしく動かし、ある建物を探す。
――あった。
秦の目線の先には、一軒の洋風な建物が建っていた。
看板には、『宿屋 ミッシェル』と書いてある。
ミッシェルというのは、ここの店主の名前だろうか? 素朴な疑問が出てきたが、今はそれどころではなかった。
荒い息をしながら、やっとの思いで店の中へ入る。
「いらっしゃいませ~、ぇ?」
受付にいる子が疑問符を付ける。
俺の異様さに驚いたのか?
「水を……水を、くだ……さい」
「えっ? あっ、水ですか?」
「そう……」
それを聞くと、受付の子は急ぎ足で宿の奥へと向かう。
待っている間に、
「とっても格好いい人が来たよ!! お母さん、お水、お水!」
とか、
「格好いい人ですって!? 見なきゃね……」
なんていう会話が聞こえてきたりもしたのだが、気にしないでおく。
数分すると、水の入ったコップを持って、受付の子と、30代に見える女性が出てきた。
渡されたコップの水を一気に飲み干す。
身体中に一杯の水が染み渡るのを感じる。
こういうのを、至福の時と言うのだろうなぁ。
なんて、感傷に浸ってみる。
「生き返った……。有難うございました」
笑顔でお礼を述べる。
そうすると、
「い……いえいえ、ととととんでもない!!」
何が、とんでもないのかは分からなかったが、受付の子は赤面しながら俯く。
「ごめんなさいね、うちの子。貴方に一目惚れしちゃったみたいで……」
「ええええぇぇぇ!? ちょ、ちょっと母さん!!」
「なんて、冗談はおいといて。改めて、ようこそ、宿屋ミッシェルへ。私がここの店主をしている、サンリエル・ミッシェル。で、隣に居るのが、娘のヨーリェ・ミッシェル。今日は、泊まって行くの?」
泊まりたいのはやまやまだが、自分の手持ちにはお金が無かった。
「俺も、泊まりたいんですが、手持ちが無くて……」
「あら、そうなの? なら、ギルドや闘技場に行って見たらどう? あそこなら、少し時間かければお金入る時もあるから」
ギルドか。ギルドというのだから、何か依頼をこなすのだろうな。しかし、登録とか色々手続きがありそうだし……。
そして、背中に背負っている鎌を見る。
コイツの、性能も確かめなきゃなぁ。
やはり、闘技場だな。
「わかりました。じゃぁ、ちょっと行って来るので」
「行ってらっしゃい」
宿屋を出る。
町を見回すと、以外に小さいのを感じる。
闘技場は町の真ん中に建っていた。
周りには、強そうな男たちがうろついている。
「あの……もしかして、貴方も……」