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違う何か

ふぅー

ドスンと、地面に落ちる。

頭の中ではさっきの耳鳴りが未だに響いていた。

 「うっ……くそっ…………」


おぼろげな足取りでフラフラと歩き出す。今、自分が居る場所は、恐らく、エリステル大陸だ。それだけは、分かった。しかし、他の情報が一切入ってこない。

周りを見渡すが、何処までも続く砂、砂。恐らく、ここは砂漠であろう。ならば、早めに此処を離れたほうが良さそうだった。日中の太陽がジリジリと秦の肌を焦がす。

しかし、一旦夜になれば、急激に気温は下がるだろう。


 「食料、水、服、まだまだ足りない物はいっぱいあるし、とりあえずは町に、いや村でもいいから人が居る場所に行こう」


そう決めると、秦はとりあえず、真っ直ぐに進む。


せめて、方角が分かればなぁ。



シャリッシャリッと、砂を踏み歩く。

暑い……

現実の世界では、季節は冬だったので、秦は厚手の私服の格好でいた。

それが裏目に出て、少し歩くだけでも全身から汗が噴出す。喉がカラカラに渇いて、ヒリヒリと痛む。


 「よぉ」


後ろから声が聞こえる。一度、聞いたことのある声。

ゆっくりと振り返る。



――――思ったとおり。


そこに立っていたのは、ついさっき秦に話しかけてきた男だった。


 「またお前か……」


半分、呆れ気味に言葉を返す。


 「おいおい、その言い草はないだろう? 一応、知り合いなんだから。それよりも、お前」


そこで一旦、男は息を吸い込んだ


 「食料と水、あるか?」


やはりか。男はギラギラとした目で俺を睨み付けて来る。

こいつも、俺と同じようにこの砂漠に来たのか。

普通なら、自分にもリスクがある強奪という手を使うことはあまり良い事ではない。しかし、自分より体格が劣る俺なら、と強行したのだろう。



なら、それがお前にとっての不幸だ。俺を見下しているなら、なおさら。

遊んで、遊んで、最後には…………



俺はポーチに手を伸ばし、隠すような仕草をとる。もちろん、水も食料も入っていない。


すると、男は勘違いしたようで、


 「ポーチに何かあるんだな? 悪いことは言わねぇ。助かりたいならよこしな!!」


男は強気に出る。


 「ひぃ! お願いします。見逃してください!!」


 「うるせぇ! さっさと、よこせ!!」


 「お願いします、お願いします……」


そういうと、秦は地面に平伏す。


 「埒があかねぇ。渡す気が無いなら奪うまでだ!」

男が元気に俺へと突進してくる。



秦は急に立ち上がり、男の突進を横に回避する。


 「平伏せ」

ただ、それだけを言うと、足を男の前に出す。


 「あ?」

勢いあまり、男は転倒する。

その隙を見逃さずに、男の腕を後ろで絞める。よく、ドキュンメンタリー番組の刑事が犯罪者に向かってやるやつだ。


 「痛っ! てめぇ、何しやがる! 離せ!」


男が暴れる。

その男に向かって警告する。


 「あんまり、無茶なことすると右腕、使い物にならなくなるよ?」


その言葉に男の抵抗が弱まる。

よしよし、計画通り。


でも、ここからは俺の欲する通りにさせてもらう。

秦は急に無表情になる。


パキッと甲高い音。

それに続くように、

「あぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」


という男の悲鳴。

男の右の人差し指はありえない方向に曲がっている。

続けて、中指、薬指、小指。更には、左手の人差し指、中指、薬指、小指を折る。

 「あっ、あぁ……」


男を見ると、頬に涙が伝っていた。


ちょっと、やりすぎちゃったかな?

一瞬、そういう思いも出てきたが、すぐに秦の中の何かがその思いを打ち消す。



 「助けて……欲しい?」


 「は、はい。お願いします……」

さっきとはまるで逆の状況だった。


 「嫌だ」

男の要求を拒否する。

そして、残った両手の親指も折る。


 「ああああああああああああああああああああああああ!!」

その悲鳴を聞いて、俺は自然に笑みを浮かべる。いや、正確には俺じゃない。俺であって、俺ではないのだ。自分でも良く分からないけど。

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