旅立ち
ストックがあるので、毎日更新できるかも
ゴソゴソと箱の中を掻き回す。中から出てきたのは、大きな鎌だった。鎌と言われれば、普通は禍々しい武器として、黒色を想像するが、今、自分の手元にある鎌はそれとは、全く正反対の代物だった。
純白の、禍々しいというよりも、むしろ、清楚で清らかな感じを醸し出しているようにさえ、思えた。
鎌の柄の部分についている、札を破り、読む。
名称: 光明鎌
ランク: S+
説明:この世界が創造されたときに、一緒に創られたと言われる、伝説の鎌。
これを手にする者は、光の戦士として闇を打ち砕く義務を科せられる。
常人が使うと、肉体を滅ぼされる。
相反するものとして、闇暗鎌が存在するとされている。
いきなり、良いのを引き当てたみたいだ。周囲を見回すと、小さな短剣を持つ者や、背中に、大剣を背負う者もいた。一番、悪い例としては、何か薬のような物しか入っていなかったり、釣竿や、ただの石が入っていた者もいた。それらの物を引き当てた人は、全員がっくりと項垂れている。
さらに、箱の中を探していると、手のひらサイズの紙と、何やら、スコープのついた機械が入っていた。手のひらサイズの紙は、どうやら、説明書に書かれたいた、守護獣が貰えるスクラッチのようだった。
しかし……
「これは、何だ? 武器のようでもなさそうだし……」
トリガーをカシャカシャと引くが、何も変化は起きなかった。
使い方が分からない。
それなら、これは後回しだ。そう思い、スクラッチに目を移す。
銀色の部分をコインの代わりに、爪で削る。
出てきた文字は、『当たらない』
早々、上手くは行かないか。それにしても、当た、が出た時点でこれはと、思ったのだが、とんだ期待外れか……
機械と箱の中に入っていた小型のポーチのような物をとりだし、機械をしまい、腰に付ける。
さて、これで準備は整ったが……
一体どうすればいいんだ?
辺りは、平原で何処に町が、村があるかさえ、分からなかった。
「おっと、すっかり忘れていました」
という、声に振り返ると、そこにはさっきの鷲、いや、救世主が居た。
「ここは、幻想空間なので何処まで行っても同じ風景です。皆さん、説明書は読みましたか? 自分の行きたい大陸が見つかった人もいるかと思います。エリステルに行きたい方は、私から見て、右に。フェリアードへは、私の正面。グランストラは左に、まとまっていて下さい」
その声に、周囲の人が3つのグループに別れた。
大体、どこも、50人程度で綺麗に分かれていた。
しかし、俺を含め、少数は何処に行くかまだ決めていないようで、うろうろとする者や、深く考え込む者もいた。
エリステルへ行く者達は、大柄な男が大半を占めていた。
逆に、フェリアードやグランストラには、小柄な男や、女子が多かった。
秦はエリステルの集団に紛れ込んだ。理由としては、まずはこの軍事国家を掌握し、権力をつけることにしたからだ。
周りの者達は、秦よりも5cm。
いや、10cm高い人も少なくは無かった。
そんな中、一人の男が秦に話しかける。
「おい、お前もエリステルに行くのかよ?」
「そうだけど」
「お前みたいな、ひ弱そうな奴、行ったらすぐにボコボコにされちまうぞ! その綺麗なお顔が台無しになる前に、フェリアードにでも行きな!」
男は脅すように、醜く笑いながら俺に向かって言い放つ。
どっちがだよ。
と、心の中で俺はほくそ笑んだ。
それは、相手を哀れんでいて、見下す。
所詮、お前は俺より下なんだ。
俺は、全てを手に入れる男。お前に構っている暇は無い。
その後もちょくちょく話しかけられたが、それを全て無視した。
「皆さん、分かれましたね? それでは、それぞれを別の場所にワープさせます。」
そう言い放ち、甲高い声を上げると視界は全て真っ暗になった。
意識はしっかりしている。体全体が穏やかな波に包まれるような不思議な感覚だった。
しかし、突如頭に耳鳴りが響く。
頭の中をガンガンと掻き回すように音がこだまし、激しい頭痛と吐き気を覚える。
「ぅっ。あっ……ぐぅ……ぅあ!?」
自然に遠のいていく意識の中で、俺は様々な悲鳴を聞いた。
恐らく、他の人も同じ目にあっているのだろう。
秦はその痛み、吐き気に必死に耐えながら、歯を食いしばった。