第一話「思い出して」
初めてのオリジナル小説です。対戦よろしくお願い申し上げます。
歩夢「………ここは?」
歩夢は目を覚ます。そこは、見覚えのない場所だった。辺りを見渡すと、どうやら自分はどこかの建物の中にいるという事が分かる。しかし、自分がいるこの場所は六畳ほどの広さがある正方形の部屋であるという事と、窓から見える日の明かりで、現在の時間帯が夕方であるという事しか分からなかった。
歩夢「……僕は何でこんな所にいるんだ?……それに────」
歩夢は自分の頭に触れる。するとそこには包帯のような物が巻かれている事に気が付いたのだ。
??「あ!目が覚めたのですね!」
そんな時である。ある男性が歩夢の目の前に現れた。
??「………いきなりの質問で申し訳ありません。貴方の名前など、自らに関する事を出来るだけお話しください。」
男性に言われた瞬間、歩夢はあることを理解した。ここは病院で、今目の前にいる男性は自分の治療を担当している医者だということである。
歩夢(ならば、従おう。)
歩夢は医者に言われた通り、自らについて、分かる限り全て話すことにした。
歩夢「……私の名前は町田歩夢です。年齢は20歳です。広島県出身です。」
医者「……ありがとうございます。それでは……貴方がここにいる理由は理解していますか?」
歩夢は、何も答える事が出来なかった。自分が何者なのかは憶えていても、何故自分がここにいるのかは全く思い出せなかった。
医者「…やはり」
医者は少し考えこんだ顔をして、歩夢に伝えた。
医者「……落ち着いて聞いてください。貴方は………記憶を失ってしまっています。」
歩夢「………そうなんですね。」
歩夢は、自分でも驚くほどに冷静だった。何故この病院にいるか答えられないと分かった時、自分の中で既にその可能性が浮かび上がっていたのである。そして、彼は探求心の権化ともいえる人間だった。記憶を失ったという自らの危険な状態すら、『面白い』と思えてしまうのだ。
医者「とても冷静ですね……」
医者は驚いていた。自らが記憶喪失になったという事実を突きつけられ、取り乱さない人間などいないと思っていたからだ。
歩夢「なんとなくですが、そんな予感はしていましたので。」
医者「……なるほど。」
医者は、歩夢がとても冷静で理解力の高い人間である事を理解した。その上で、こんな質問をした。
医者「………あなたは、自分が記憶を失った理由を知りたいですか?」
歩夢「………どうなんでしょう。」
歩夢は悩んだ。ここで何があったかを知った方が楽であるが、歩夢の探求心が答えを聞かせようとしないのである。
歩夢(折角なら、自分で理由を見つけてみたい)
歩夢は、医者にこう答えた。
歩夢「……知りたくないです」
医者はやはり、と納得するように頷いて歩夢に告げた。
医者「分かりました。しかし、他の部分も損傷している箇所があるので、そこはリハビリをしながら治していきましょう。」
歩夢「はい。ありがとうございます。」
医者「では、私はこれで。」
歩夢は医者が部屋から出ていくのを見送った後、再びベッドに横になった。そして、自分が記憶を失った理由について考え始めたのである。
歩夢(………殆どの記憶を失ったのならまだしも、何故こんな一部だけの記憶を失ったのだろうか………)
歩夢は考えれば考えるほど、正解から遠ざかっている気がした。歩夢が気晴らしに窓を眺めると、既に日は沈み、満月がこの部屋を照らしていた。
歩夢(…今日はもう寝よう)
数時間後、歩夢は目を見開いた。しかし、明らかに先程までいた病院とは様子が違っていた。そこは正に、遊園地のような場所だった。パレードの最中なのか、動物を模した様々なキャラクターを乗せた大きな機関車のような乗り物が園内を回っていた。
歩夢(ここは……どこだ?)
歩夢は混乱した。探求心の権化とはいえ彼も人間である。あまりの非現実ぶりには、困惑せざるを得なかった。
歩夢(……とにかく、ここから離れよう)
歩夢は歩き出す。すると、パレードを行っていた大きな機関車が自分に向かって突っ込んできた。それを認識した瞬間にはもう既に遅く、衝突を回避する事は不可能だった。しかし
次の瞬間───
??「危ない!」
何者かが歩夢を突き飛ばした。そして、その何かはそのまま機関車と衝突し、爆散した。
??「……大丈夫?」
そう言って手を差し伸べたのは白い制服を着た少女だった。
歩夢「助かったよ。ありがとう。」
白い少女「例には及ばないよ。」
歩夢「……ところで、ここは何処なんだい?」
白い少女「……ここは、貴方の夢の中。」
歩夢「夢の中……なるほど、どうりでいきなり遊園地にいるということも可能なわけだ。」
白い少女「うん。」
歩夢は、目の前の少女が自分の夢の中の登場人物であると理解した上で会話を続けた。
歩夢「それで、君の名前は?」
白い少女「……分からない。」
歩夢「そっか……それにしても………」
歩夢は、それ以上に気になっていることがあった。
歩夢「………確か、夢って基本的に過去に体験したことが現れるものでしょ?遊園地なんて、最近どころか生まれてから全く行ったことがないんだけど……」
白い少女「……思い出して。」
歩夢「……え?」
白い少女がそう口にすると、歩夢の視界は黒く染まり、歩夢は気を失った。
彼が再び目覚めると、あの病院の景色があった。窓からの景色を眺めると、既に朝日が昇っていた。
歩夢(……もう朝か。)
歩夢は、どうしたものかと考えた。
歩夢(何か、かなり特殊な夢を見た気がする………。)
歩夢がそんな事を考えていると、部屋に医者が入ってきた。
医者「おはようございます、町田さん。既に起きておられたのですね。」
歩夢「ああ、おはようございます。」
医者「朝食はもう少しで届きますのでお待ちください。」
歩夢「ありがとうございます。ところで……」
歩夢が周りを見渡す。
歩夢「大変失礼ですが……この病室には、なぜ私しかいないのでしょうか?それに、何も娯楽がないのは少し……」
歩夢が問うと、医者は申し訳なさそうに理由を述べる。
医者「………貴方は他の方と比べても大きな怪我を負っています。それも不謹慎ながら生きている方がおかしい程です。そのような点から、このような場所に隔離させていただいております。」
歩夢「………なるほど。」
医者「また、過去にも何度か記憶喪失の方をこの病院で看護していたのですが、一度記憶が戻った際に狂乱してしまい、他の方が巻き込まれ、中には亡くなった方もいらっしゃっる、ということがあって………それ以降、記憶を失った方は一度ここに隔離する、というルールになったのです。」
歩夢「……そんな過去があったんですね。」
医者「……しかし、町田さんはかなり落ち着いておられますし、もう大丈夫だろうと考えています。ですので、テレビなどは後ほど持ってきます。」
歩夢「ありがとうございます。」
医者「ですが、怪我自体はまだ治っておりませんので、ここにいてもらいます。よろしいですか?」
歩夢「分かりました。」
話を聞いた歩夢は、安堵した。娯楽が最低限あれば、暇になることはないと考えたからだ。それに、現代社会の情報を知れば自らの記憶を取り戻すヒントになるかもしれない。歩夢は、テレビが来るのを待ちわびた。数時間後、病院の関係者がテレビを持ってきた。
歩夢「ありがとうございます。」
期待が止まらない歩夢は、設置が完了するや否やすぐさまテレビをつけた。歩夢が探していたのはニュース番組だ。政治関係は何とも言えないが、事件やイベントの情報は、やはりニュースが一番効率的に回収出来ると考えていた。
アナウンサー『続いてのニュースです。あの悲惨な事件から一年。被害者家族の思い、そして大人気だったあのテーマパークの今を取材しました。』
歩夢(………そんな事故があったのか……)
アナウンサー『一年前の今日、〇〇〇〇年〇〇月〇〇日。広島県にある有名な遊園地⦅ドリームライフ⦆のアトラクションが不具合により暴走し、一部の来場者が巻き込まれるという事故が発生しました。』
歩夢「!?」
歩夢は驚くしかなかった。このような大規模な事故があったこともそうだが、彼にとってはそれ以上にとんでもないことが起こったのだ。
歩夢(あの機関車のような乗り物………それにこの景色も………間違いない。夢で見た内容と同じだ。)
そして、歩夢は疑問に思った。
歩夢(………なんでいきなりこんな夢が………?僕も巻き込まれた人間だというのか………?)
歩夢は考える。自分が事故の被害者だとして、何故そのような夢を見たのか。
アナウンサー『それでは次のニュースです』
歩夢(……取り敢えず他のニュースも観ておくか。)
考えても答えが出ないと思った歩夢はすぐに頭を切り替えたのだった。歩夢がニュースを観終わった後、医者に問い出した。
歩夢「あの…………すみません」
医者「……どうされましたか?」
歩夢「……あの事故について、詳しく教えて頂けませんか?」
医者は少し驚いた顔をした。何故なら、彼がこんな悲惨な事件に興味を示すなど思ってもみなかったからである。そして少し考えた後答えを述べた。
医者「……分かりました。」
最後までお読み頂きありがとうございました。Pixivでは二次創作を書いているので、宜しければそちらもお読みください。




