8 メイドに告げる
やっと仕事をやる気になったのかと、これ見よがしに大きなため息を吐いてお願いする。
「ドレスの着方がわからないの。何もやることがないなら、着方くらい教えてもらえない?」
まだ私をアリスのままだと思っているらしい。ボブカットのメイドが鼻で笑って答えた。
「何言ってるんですか、お嬢様、いつもお一人でお着替えなさってましたよ。まぁ、ちゃんと着れていませんでしたけど!」
「ちょっとやめなさいよ。それ言ったら可哀想だって。また泣き出しちゃったらどうするのよ。面倒じゃない」
「ええ? 泣かせておけばいいんじゃない? その間、何もしなくていいから楽でしょう?」
「当主様に告げ口されたらどうするのよ」
「そんなことができるなら、今、こんなことになってないんじゃない?」
「そっか。そうよねぇ」
メイド二人は、ニヤニヤ笑いながら私を見つめた。
今までこんな風にアリスを馬鹿にしてきたのね。こんなくだらない奴らの言葉に傷つく必要なんかない。
……と私は思うが、アリスの性格では、そうもいかなかったのだろう。
それに、彼女は自分を責めていた節がある。自分が言い返せない、気が弱いからいけないのだと思っていたようだけどそうじゃない。
もちろん、誰にだって悪い所はあるだろう。直せるのであればを直すべきだとは思う。だが、いじめられるのは自分が悪いからではない。
いじめをする人間が、そんな馬鹿なことをしなければいいだけだ。
私自身も過去に理不尽ないじめを受けたことを思い出し、怒りが抑えられそうにない。
アリス、悪いけど、あなたのキャラクターぶっ壊させてもらうわね。
「あら、泣かないんですか? もしかして我慢してますう?」
「わあ、偉いです! あど、どれくらい持ちますかね」
笑いながらメイドたちは拍手をする。
二人の鼻に拳を一発入れてやりたいが我慢だ。怒りに任せてまくし立てるのは良くない。ここは冷静に。
大きく深呼吸をし、一呼吸置いてから口を開いた。
「えーと、あなたたち、私が言った意味がわからなかった?」
「はい? それはこちらの台詞ですけど?」
ボブカットのメイドは、眉間に皺を寄せて私を見つめる。
泣く気配のない私を訝死んでいるようだった。
「やっぱり言葉が通じないわね。会話が成り立たないんだもの。そんなあなたに、ドレスを着せてと言ってもわからないわよね?」
「はあ!?」
「今まで、ドレスの着せ方がわからないから、仕事してなかったんじゃないの? それともぺちゃくちゃ無駄話するしか脳がないわけ?」
「な、なんてことを! そんなことをお嬢様に言われたくありません!」
メイドは顔を真っ赤にして言い返してきた。
どうして、ここまで偉そうにできるのか。その神経がわからない。
「はい? 私に言われたくないですって? 職務放棄してる人間に私だって言われたくないわよ。そんなに私の面倒が見たくないと言うんなら安心しなさい。この家にいられなくしてあげるわよ」
私が微笑んだ瞬間、メイド二人の顔から血の気がひいていくのがわかった。




