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気弱な令嬢ではありませんので、やられた分はやり返します  作者: 風見ゆうみ


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1   アリス・キュレルに転生する ①

 誰かに名を呼ばれた気がして、目を開けた私の視界に飛び込んできたのは見慣れない天井だった。

 一瞬にして意識が覚醒し、慌てて上半身を起こすと、先程まで手を置いていたあたりに、マニキュアの瓶よりも少し大きめの小瓶が転がっているのに気がついた。

 枕元のシーツは赤黒い何かで濡れている。それが何なのか確認するために恐る恐る指で触れてみた。

 鼻に近づけてみると血の臭いがした。


 物騒すぎる。

 

 ……というか、ここはどこなの? はねられそうになったことは覚えているんだけど、そこからの記憶がない。

 救急車で運ばれて病院にいるんだろうか。


 上半身だけ起こした状態で周りを見回してみる。明らかに病室ではない。

 ボキャブラリーに乏しい私の言葉で説明すると、お金持ちのお嬢様の部屋といった感じだ。


 視界に入るドレッサーや書き物机は高級そうに見えるし、今、私が寝ているのはキングサイズのベッドで、マットもふかふかだ。

 壁紙は貼られていないが、白い壁がとても綺麗だ。


 病院の個室にしては豪華すぎる。芸能人じゃあるまいし、私がこんな病室に入れるとは思えない。

 一泊いくらするのか。考えるだけで恐ろしくなった。


 もしかして、これは異世界転生というやつだろうか。


 跳ねられそうになったところまでは覚えている。

 あの時、私は死んでしまった可能性が高い。


 ……そうだ。一緒にいた哲平はどうなったんだろう。


 私を庇おうとしてくれていたから、私が死んだのなら哲平も同じ運命を辿っているでしょう。


 本当に最悪だ。あいつには何だかんだと迷惑をかけていた。謝るなと言われそうだけど、謝れるものならちゃんと謝りたい。


 だから、哲平も転生してくれていないだろうか。 

 そんなことを考えたあと、私は両頬を叩いた。


 ウジウジしているのは性に合わない。色々と思うことはあるけど、まずは状況を整理することにした。


 眠る前だったのか、ランタンの明かりはつけっぱなし。

 ベッドから起き上がり、揃えられていた靴を履き、近くにあった姿見で自分を確認してみると、鏡の中には見知らぬ少女がいた。


 身長は高めで胸はあるけれど、体はガリガリで頬もコケている。


 艶はなく、ボサボサの腰まである黒く長い髪は、手櫛でのばしてもすぐにカールしてしまうから、彼女はもともとくせっ毛なのだろう。


 瞳は鳶色の瞳ということもあって、日本人のような見た目に近い。だが、顔色の悪さと髪が顔にかかっているせいで、とあるホラー映画を思い出してしまった。


 ……鏡から出てこないわよね。見たことないから分からないけど。


 身につけている露出の高い真っ赤なネグリジェは彼女の大人しそうな雰囲気とまったく合っていない。


 赤色が好きだったから、このネグリジェにしたのかしら。彼女の雰囲気にあってないような気がして、何だか違和感がある。


 ……って、失礼なことを言っちゃ駄目ね。自分が着るものなんだから、好きなものを着ればいいわ。 


 枕元の様子から察するに、彼女は血を吐いたようだ。顔色が悪いのはそのせいだろう。


 壁にかかっていた大きな時計で時間を確認すると、まだ早朝だった。


 カーテンを開けると、思わず目を閉じたくなるくらいに眩しい光が部屋の中に入ってきた。窓を開ければ、少しひんやりとした風が頬をくすぐり、近くの木にとまっている、小鳥のさえずりが聞こえてきた。


 明かりを消して、太陽の光で明るくなった部屋の中を見回してから考える。


 まずは私が憑依してしまった彼女が何者なのか確認しないといけないわね。


 流行りのマンガや小説にあるような何かのキャラクターに憑依したとか、そういう展開でないことを祈りたい。


 というのも、私は乙女ゲームやファンタジー小説、マンガには詳しくない。読んでいたのはミステリー小説ばかりだった。


 だから、ゲームのキャラに憑依してしまっていたら、これから何が起こるかなんて予想もつかないから絶対にやめてほしい。


 そういえば、はねられる前に女の子の声が聞こえてきたわよね。


 ……もしかすると、この子の声だったのかもしれない。 


 落ち着いて考えることができず、20畳くらいはありそうな広い部屋の中を歩き回る。

 すると、窓際にある書物机の上に、分厚い本のようなものが置いてあることに気がついた。


 手に取ってみると、かなりの重みを感じて両手で持ち直す。

 B5サイズの辞書のような本だ。


 表紙にはみみずがのたくったような文字が書かれているが、日記帳と読むことができた。

 たぶん、読みづらいと思ったのはこの国の文字だからで、すんなりと読むことができるのは元の持ち主の記憶があるからだろう。


 全部読み終えるのは時間がかかりそうなので、とりあえず、ここ最近の日記を流し読みしていくことにした。


 

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