7.
8月3日。
ゆっくりと目を開ける。頭の後ろで手を組み、大の字になって寝ている。
しばらくして、狐芙が自分のマットに座った。
朝飯は相変わらずパンだけだ。ディシアが向かいに座って口を開く。
「陌鋒、俺たちが狩りをした後、必ず死体を処理するのは知ってるな。獣と人間じゃ処理の仕方も違う。せっかくだから、今のうちに話しておく。獣や魔物は皮を剥いで肉を切り分けてな。大きさで分けたり、腐敗を防いで疫病を撒き散らさないようにする必要があるのは分かってるな?」
ディシアが一息ついて、死体のあった方をチラリと見る。
「人間の死体はな、野獣に食わせるわけにはいかねえ。自分たちで処理しなきゃなんねえんだ。殺したのは俺たちだとしてもな」
「死体はまとめて燃やす。大きな獣も同じだ」
そう言って顔を上げ、フッと笑う。
「いつかお前もできるようになるさ。そしたらもう、一人前だな」
「頑張ります」
俺は軽く笑ってうなずいた。
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朝飯を終え、再び村へ向かう。
どれだけ歩いたか、ようやく村に着いた。店で油を何本か買う。ディシアが俺たちにここで待ってろと言い、衛兵に追い剥ぎのことを報告しに行った。
待っている間、狐芙と空を見上げたり、木を見たり、捕まえた虫の数を競ったりして時間を潰す。そうしているうちに、ディシアとヘルクが戻ってきた。
昼飯を済ませ、再び洞窟へ向かう。道はもう覚えている。すぐに着いたが、空はもう暗くなりかけていた。
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前に足を取られた場所に油を撒き、魔法で火をつける。俺たちは洞窟を飛び出し、蜘蛛が出てくるのを待つ。そう長くは待たず、蜘蛛が猛スピードで這い出してきた。
ディシアがタイミングを見計らって飛び出し、後ろ足の一本を斬り落とす。ヘルクの魔法が前脚に命中する。
蜘蛛が素早く体を回転させ、二本の前脚を上げて攻撃態勢をとる。短い距離だが急に飛びかかってきて、大進と平野とヘルクが後ろに飛び退く。
ディシアが一旦後退し、奴が動きを止めた隙に、大進がもう一本の前脚に刀を叩き込む。
ディシアが再び間合いを詰め、残った左側の脚を斬り落とす。
大進と平野が右側の残りを片付ける。蜘蛛は地面に倒れ、千切れた脚がまだピクピクと動いている。ディシアが大剣で頭を一振り。しばらくして、奴は完全に動かなくなった。
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ヘルクが油の一部を洞口に撒き、再び火をつける。残りを蜘蛛の死体にかけ、燃やす。パチパチと音を立てながら炎が上がる。俺たちは洞窟の入り口近くに陣取り、明朝の探索に備える。
夕飯を済ませ、マットに横たわる。狐芙は相変わらずすぐそばにいる。
彼女の方を見ると、もう眠っていた。空を見る。月がやけにまん丸だ。そのままうつらうつらと…
目を覚ますと、もう朝だった。欠伸を一つ。
「陌鋒、今日はあんたが最後〜」
狐芙がこっちを見て言う。
頭をかく。「何で起こしてくれなかったんだよ?」
狐芙がパンを差し出す。朝飯を済ませ、洞窟の探索を始める。
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ヘルクが照明魔法を使う。ゆっくりと奥へ進む。しばらく歩くと、最深部に着いた。一面、蜘蛛の巣だらけだ。一番奥には網で包まれた塊がいくつかある。
ディシアが近づいて網を破る。中から黄色い球体が転がり出た。一通り探索するが、これといって他に何もない。蜘蛛の巣を少し剥ぎ取る。網目がしっかりしていて、わりと清潔だ。ただ、ちょっと気持ち悪い。卵や幼体がポロポロ落ちてきて…うへぇ。
蜘蛛の巣を回収し終えると、ヘルクが足元の巣に火をつける。
しばらく洞口で待機し、万が一に備える。
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時間が経ち、オルカ村に戻る。ディシアが討伐完了を報告しに行く。しばらくして戻ってきた彼女が、報酬を手にしている。
「陌鋒坊や、頑張ったからな、特別だ」
ディシアが銀貨を一枚、俺に放る。
「わっ…多くないすか?」
「多くねえよ」
彼女は大進と平野に銅貨を数十枚ずつ渡す。
「じゃあ、俺たちは先に」
大進と平野は手を上げて去っていった。
狐芙には40枚、ヘルクには15枚。
追い剥ぎを片付けたおかげで、衛兵から銀貨2枚の報奨金も出たらしい。銀貨2枚と銅貨50枚だ。
「昼飯は俺が持つ」
ヘルクが淡々と笑いながら言う。
「やった!」俺と狐芙が叫ぶ。
「おいおい、俺が奢る時はそんな反応じゃなかっただろ」
ディシアが笑う。
「次は姉貴が早めに言ってくださいよ!」
俺と狐芙が口を揃えて言うと、ディシアは首をかしげて腰に手を当て、微笑んだ。
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飯が運ばれてくる。麺とステーキだ。
「あ〜食った食った!」
背もたれに寄りかかって伸びをした。
「あんた、食べるの遅いんだよ」
狐芙が言う。
「俺は二位だ!」
「じゃあ、堂々たる一位は誰でしょーか、ふんふん」
「ふん…」
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飯を終えて店を出ると、大進と平野が近くに立っている。俺たちを見て歩いてきた。
「おう、食えたか?馬車が通れるようになったぞ。マッハさんが来てる。今から戻るか?」
大進が後ろを親指で示す。
ディシアとヘルクがうなずく。
「歩かなくていいんだ〜」
狐芙が言う。
「良かった!」
俺は狐芙を見て言う。
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馬車に揺られながら、景色を眺める。
「まさか初めての野営があんなに長くなるとは思わなかったな」
「外じゃ何が起きるか分からん。ただ、こんなに長く外にいることは、そうそうないな」
ヘルクが言う。
ヘルクを見て、それから他の連中を見る。狐芙は隣で既に眠っている。ディシアも寝てる。大進と平野は外を見ている。
「あの、ヘルクさんも寝ていいすよ」
ヘルクがこっちを見て、鼻の頭を揉む。
はあ…そうさせてもらうか。
窓側から体をずらし、壁に寄りかかって仰向けになり、目をまばたきしてから閉じた。
俺はまた外を眺める。別に見るものなんて何もないけど、ただ時間を潰すだけだ。
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時は流れる。
「起きて〜」
狐芙に揺り起こされる。
「あ…着いた?」
目をこする。
「早く降りて!」
狐芙が先に飛び降りる。
俺も降りて、皆と別れる。家に帰り、風呂に入って着替えを洗う。
ベッドに腰かけ、刀を丁寧に拭いてから、枕元に立てかける。
机の下からパンを引っ張り出し、ちぎって口に入れようとしたその時、トントンとドアを叩く音。
パンを置いて立ち上がり、ドアを開ける。
「よっ!」
「あ…狐芙」
手を上げて応える。
「飯行こう!もちろん奢りね」
「は?なんで俺が?」
忘れたの?さっきの賭け、どっちが勝ったか。
彼女が腰に手を当てて、ニヤリとする。
頭をかき、眉をひそめて…「…分かったよ」
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狐芙と食堂に向かい、注文を済ませて席に着く。
「あ〜あの時、足取られてマジでびびったわ」
「ははは、次はちゃんと周り見た方がいいよ」
「誰もいないと思ったのに、いきなり足払いされてさ。しかも二回も!」
「実戦経験が足りなさすぎなんだよね」
飯を終え、宿の方へ歩く。
「本当に一緒にいてやろうか?」
「なんでお前に一緒にいてもらわなきゃなんないんだよ」
「色々あったからね」
「別にいいって」
宿の前に着く。
「じゃあ、戻るね」
彼女が言う。
「送ってくよ」
「え?いいのに」
「いいからいいから」
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狐芙を家まで送り、自分の部屋に戻る。
ベッドに横たわり、頭の後ろで手を組んで天井を見る。
欠伸が出る。けど…眠れない。




