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旅路  作者: 風の中で
6/7

6.人

それから数日間、相変わらず草摘みの日々が続いた。


---


8月1日。


目をこすりながら服を着込み、ギルドへ向かう。


「姉貴、おはようございます」


「おう、陌鋒!いい依頼が来たぞ」


ディシアが腰に手を当てて言う。


「マジっすか?」


彼女が一枚の紙を指さす。


「南の村からの依頼だ!オルカ村って言うんだが、王国側にあるらしい」


「王国の依頼が帝国にも来るんすか?」


「心配すんな〜あの村は帝国に近いし、周りにギルドがないからこっちに回ってきたんだよ」


なるほどな、とうなずく。


「馬車を呼んでくる」


ヘルクが言う。


「そういや陌鋒、残り金いくらだ?」


「銀貨4枚と銅貨50枚くらいすね」


「よし、今回の依頼は多めにやるからな。お前の頑張りへのご褒美だ」


腰に手を当てて言う彼女。


「いいすよ、今は十分ありますし。それに結構貯まりましたし」


「うーん…狐芙がお前にライターくれたんだろ?お前は狐芙に何を贈るんだ?」


彼女が身をかがめて、小声で尋ねる。


「そう言われても…狐芙が何好きか分かんないす。姉貴、知ってます?」


首をかしげて聞くと、


「さあな、俺も知らねえよ」


手を広げる。


腕を組んで、眉をひそめながら考え込む。


しばらくして大進と平野が来て、その後すぐに狐芙も到着した。


俺は眉をひそめながら首をかしげて狐芙を見る。彼女もチラッと俺を二度見ては、すぐに顔をそらす。


村の入り口へ向かい、馬車に乗り込む。


---


王国の国境まで十分ほど進むと、二人の衛兵に止められた。御者が交渉し、ディシアが降りていく。五分ほどして戻ってきた彼女が言う。


「歩きだ。この先に追い剥ぎが出るらしくて、馬車は通れねえそうだ」


「追い剥ぎ?俺たちに戦闘能力があるとは言わなかったのか?」


ヘルクが尋ねる。


「王国で死人が出ると、帝国にまで影響するのを嫌がったんだろ」


馬車を降りる。


一人の衛兵がディシアを見て言う。


「あなたのことは知ってる。止めたくはないんだが、これが仕事でな。もし何かあったら俺たちが責任取らなきゃならねえんだ」


「構わないさ」


ディシアが手を振る。


オルカ村へ向かって歩き始める。


「なあ、追い剥ぎって衛兵は襲わないんすか?」


「奴らは王国の勢力には積極的に関わらないんだよ。国もいちいち森から一人ひとり引きずり出すのは面倒だからな。通りかかった馬車だけを狙ってる。数日、馬車が通らなきゃ自然とどっかに行くさ」


ディシアが言う。


「じゃあ、もし馬車が来なかったら、今度は俺たちを襲うんじゃ…?」


「安心しろ。追い剥ぎに大した奴はいねえよ」


しばらく歩いてオルカ村に到着。ディシアとヘルクが依頼の詳細を確認しに行く。


大進さんと平野さんは先に昼飯に行ったらしい。


「ちょっと待つか」


ポケットから干し肉を二本取り出し、狐芙に渡す。


「ちょっと待つか〜」


受け取りながら言う。


「つーことは、帰りも歩きか?めっちゃ遠いじゃん」


「仕方ないだろ。道が通れるようにならなかったら、歩いて帰るしかないね」


狐芙が言う。


しばらくしてディシアたちが戻り、小さな食堂に入る。


「洞窟はここから結構遠い。半日はかかるな。道具はちゃんと持ってきたか?」


ディシアが尋ねる。


「大丈夫です、ディシアさんが全部持ってくれてます」


狐芙が答える。


「で、俺たち何やるんすか?」


「洞窟探検だ。中にいる魔物を倒せば、報酬とは別に戦利品も全部お前らのものだ。依頼料は銅貨50枚だ」


---


昼飯をさっと済ませ、森の中の洞窟へ向かう。


どれだけ歩いたか、空が黄昏に染まり始めた。今夜はここで野営だ。


狐芙がバッグから糸巻きを取り出す。


「陌鋒!ちょっと来て!」


「どうした?」


呼ばれて近づく。


「この糸、持ってて」


受け取ってうなずく。


彼女は木に糸を二回巻きつけて縛り、糸巻きを地面に置く。俺の持っていた糸を二本に絡め、それを持ってキャンプ場の周りを一周。曲がり角ごとに木に巻きつけ、最初の木に戻ってまた数回巻き、糸を切る。


「何してたんだ?」


「後で分かるって!」


バッグから鈴を何個か取り出し、いくつかを俺に渡す。


「これ、糸に付けて。一本に二個くらいでいいから」


そう言って自分は最初の木に付け始める。


「付けるの遅い方が飯おごりな!」


「は?」


急いで反対側の木に付け始める。


「私の勝ち!陌鋒おごりね!」


腰に手を当てて俺を指さす。


「ずるいだろ!」


「ふんふん」


「ふんふん…姉貴、今日の飯は俺が作ります!」


ディシアに向かって言う。


「おお!もちろんいいぞ!」


「何でだよ!」


「おごるって言ったじゃん」


「そういう意味じゃなくて!」


「俺が作ってやろうって言ってんのに」


「作ったことない奴に作らせられるか!」


「もしかしたら美味いかもしんないだろ?」


「嫌だ!」


「なんで嫌なんだよ!姉貴と俺の飯、何が違うんだよ!」


「ちゃんと習ってからにしろ!」


「習う必要あんのか?ぶち込めばいいだけだろ」


「それで食えると思ってんのか!」


「食えるっしょ。美味いかどうかは別にして」


狐芙がポカンと口を開けて俺を見る。


ディシアたちが薪を拾いに行き、俺と狐芙はジャガイモの皮を剥いて残る。六個剥いて器に入れた。


俺はマットに寝転び、狐芙は隣に座る。


「なあ狐芙、どうせ最後にはパンも食うんだし、鍋に入れて煮込んだら美味いかな?」


手を上げながら言う。


「アホ?まずいに決まってるでしょ。誰がパンを鍋に入れるのよ」


「まあな…でも、もしかしたらイケるかも?」


「今まで誰もやってこなかったのには理由があるんだよ」


「皆、自分だけこっそり食べてるんじゃね?」


上体を起こして笑いながら言う。


「ふん…バカじゃないの」


「こっそり入れてみるか?」


「ディシアさんに蹴り飛ばされるわよ」


狐芙が笑う。


「やめとこ」


---


しばらくして、ディシアたちが薪を抱えて戻ってきた。


「一晩分くらいはあるかな」


ディシアが服の埃を叩きながら言う。


地面に二本の鉄棒を立て、横にもう一本を渡して、鍋の取っ手を掛ける。


ディシアがバッグから木のまな板を取り出し、ジャガイモを切る。肉を取り出して匂いを嗅ぐ。


「陌鋒!狐芙!肉は大きめがいいか?小さめがいいか?」


「大きい方がいい!」二人で答える。


ディシアが笑い、肉を切り分ける。


夕食の支度が始まる。狐芙が立ち上がり、大きな布を取り出す。


「手伝おうか?」


「いいの?」


立ち上がって隣に行く。


キャンプ場から少し離れた場所で、狐芙が木に布を巻きつけて縛る。小さな空間ができた。


「完成!戻ろ」


腰に手を当てる彼女。


「何もすることなかったな」


「これからはずっとあんたの仕事だから」


マットに寝転ぶと、周りに蚊取り線香のようなものが刺してある。虫除けと、獣避けの匂いが混ざっているらしい。


ディシアが油と醤油の瓶、八角の袋、そして壺を取り出す。


火を起こし、油を鍋に注ぐ。温まったところで肉を投入。ジュージューと音を立てる。軽く炒めてジャガイモも加え、さらに炒めてから水を半分ほど入れる。八角を二つ、生姜少々、醤油を少々。蓋をして、マットに座り、時々火の番をする。


一方でヘルクは太めの棒を一本取り出し、先を尖らせる。バッグの横から壺と布切れを取り出す。それは簡易的な包帯らしい。布を壺に浸して、蓋をしてバッグに戻す。


また一方で、狐芙はバッグから茶碗と匙を取り出す。布を水で濡らして拭き、乾いた布で拭いてから板の上に並べる。


---


いつの間にか夜が更けていく。


皆で夕飯を囲む。一人一本ずつ干し肉をかじりながら。姉貴の飯はやっぱり美味い。


食後は皆マットに寝転んだり座ったりして喋っている。


今夜の最初の見張りは俺とディシアだ。だから今のうちに寝ておこう。


マットに横たわり、腕を枕にする。


「寝るの?」


狐芙が尋ねる。


「寝る」


「寝相、変だね」


彼女が横になって頬杖をつきながら言う。


「そうか?」


自分の体を見る。脚を組んで寝ていた。


「ズボン汚れるよ」


「え?」


ズボンを見てパンパンと叩き、また仰向けになる。


「じゃあ、おやすみ」


彼女も仰向けになる。


「あ〜…」


欠伸をして、肩を動かす。そのままじっとしている。


---


どれだけ経ったか。


「ん…」


目を開けると、狐芙が目の前で揺れている。


「見張りの時間だよ」


「おう…は〜」


起き上がり、伸びをして欠伸をする。


「しかしさ、あんた寝相ホントに酷いね」


狐芙が笑う。


「え?マジすか?」


「見てみなよ、自分とマット」


目をこすって自分の体とマットを見る。緑色の粒が体中とマットにびっしり。


「何だこれ?俺、寝相いいはずなんすけど…」


一粒つまんでまじまじと見る。


狐芙は自分のマットに戻って横になった。


「姉貴、俺ってそんなに寝相悪いんすか?」


ディシアの方を見る。


「さあな。俺も寝てたし」


木に寄りかかって笑いながら言う。


「寝るわ」


狐芙が言う。


「おう、おやすみ」


立ち上がって体についた粒を払い、マットもパンパンと叩く。


「ぷ…ん…」


隣を見ると、狐芙が笑いをこらえている。


「何笑ってんだよ?」


「もう寝てま〜す」


「ほー…寝言で喋れるんだな」


「ふんふん、さあね」


「何時間見張んの?」


マットに座ってディシアに尋ねる。


「四時間くらいだな。疲れたら言えよ」


「長いっすね。見張ってる間、何すんの?」


「座ってるくらいしかねえな」


「あ〜…」


立ち上がってあたりを見回し、木から枝を一本折って、他の枝を叩いて遊ぶ。


しばらくしてマットに戻り、枝で焚き火をいじる。寝転んで星を見る。また起き上がって木のそばに行き、草を一本抜く。


「姉貴!」


小声でディシアに見せる。


「ふ…」


彼女は顔を背け、手で口を覆う。


狐芙の前にしゃがみ、抜いた草で彼女の鼻をくすぐる。


「ん…」


彼女が手で顔をこする。


顔を上げてディシアを見て笑う。もう一度くすぐる。ディシアはゆっくりと顔を背ける。


彼女を見てまばたきし、下を見る。狐芙が静かにこっちを見ている。手にはさっきの草の先端が握られていた。


「あの…狐芙…聞いてくれ。俺じゃないって言ったら信じるか?」


彼女が素早く起き上がり、左肩にパンチを喰らわす。


うずくまって倒れ、殴られた場所を抑える。狐芙は何事もなかったようにまた寝る。


ディシアが手で口を覆い、笑いをこらえている。


しばらくして起き上がり、ディシアを見る。


「殴るの、痛ぇっす…」


「ははは…」


ディシアが手で口を覆い、肩を震わせている。


「寝てるとこ起こすからだ」


「起きないと思ったんすけど…」


腕をさすりながら自分のマットに転がる。


ディシアの笑い声が時々聞こえる。


---


しばらくしてディシアが大進と平野を起こす。


「やっと寝れる!」


仰向けに倒れ込む。


---


目を開け、体を起こす。


「もう寝なくていいのか?」


前を見ると、ヘルクがマットに座ってこっちを見ている。


「ヘルクさん…もう眠くないっす」


伸びをしながら言う。


「そうか。野営はどうも落ち着かなくてな。帰ってからゆっくり寝るといい」


「俺は結構よく寝れたんすけどね」


「それは何よりだ。…しかし、ずいぶん汚れてるな。叩け」


自分の体を見て、立ち上がってパンパンと叩く。


「汚すぎだろ。どうやったんだ?」


頭をかく。


「ふ…」


ヘルクが首を振って笑う。「夜中に遊んで転んだのか?」


何も言えずに頭をかく。


---


しばらくして狐芙がゆっくりと起き上がる。目をこすり、欠伸をして、水筒を手にして一口。またマットに戻り、左右を見る。土の中から小石を掘り出して、俺に投げる。


「あだっ!」


右腹を抑えながら彼女を見る。


「また殴られたのか?」


ディシアが目をこすりながら笑う。


隣に座っていたヘルクが俺とディシアを交互に見る。


「何かあったのか?」


「いやな、昨夜、陌鋒が狐芙の鼻を草でくすぐって、後で殴られたんだ」


ディシアが笑いながら説明する。


「ふ…」


ヘルクが薄く笑い、右手の人差し指で鼻の先をこする。


「次からは学習するな」


淡々と笑いながら俺を見る。


頭をかく。


---


しばらくして大進と平野も起きてくる。朝飯にパンをかじり、道具を片付けて再び出発する。


どれだけ歩いたか、洞窟の前に着いた。入り口に立ち、ヘルクが鉄の缶から油の染みた布を取り出し、棒に巻きつけて火魔法で灯りをともす。


中へ進む。先頭はディシア、次にヘルク、俺、狐芙、大進、平野。しばらく歩いたところで、ディシアが足で何かを踏む。白くてネバネバしたものだ。


「逃げろ!」


突然彼女が叫ぶ。


「何だこれ!」


巨大な蜘蛛がこちらに向かって突っ込んでくる。


皆一斉に洞窟の入り口へ走り出す。


「うわああああ!」


必死で走る。


「ひいい!」


狐芙が叫びながら俺の横を追い越す。次にディシア、ヘルク、大進、平野。


「待ってくれ!」


走りながら後ろを振り返ると、巨大な蜘蛛が猛スピードで追ってきている。


二分ほどで洞窟を飛び出した。巨大蜘蛛は追ってこなかった。


「こんなとこに何でこんな蜘蛛が…」


ディシアが洞窟を見つめる。


「あの蜘蛛は光を嫌う。だから今は安心だが…なぜここに現れたのか。それに、ああいう大型種はもうほとんど見かけないはずなんだが」


ヘルクが腰に手を当てて言う。


ディシアがうなずく。


「油はまだあるか?」


「ない。一旦村に戻ろう。あの蜘蛛を追い出さないことには対処できん」


村へ戻り始める。しばらく歩くとまた日が暮れかけてきた。昨夜と同じように野営するしかない。マットを敷き、刀を横に置く。


「今夜は刀を手元に置いておけ。狐芙、お前と陌鋒で最初の二時間を見張れ」


「今日は少し離れた場所にも鈴を仕掛けよう」


ディシアが言う。


狐芙と一緒に糸を張り、鈴を付ける。今夜の食料はパンだけだ。ディシア、大進、平野はもう寝ている。ヘルクがマットに座り、周囲を見張っている。


俺と狐芙は顔を見合わせる。


「何かあったんすか、ヘルクさん?」


ヘルクがしばらく俺を見てから言う。「あの衛兵が言ってた追い剥ぎだ。この辺りに潜んでるかもしれん」


「え?」


二人であたりを見回す。


「確証はないが、用心するに越したことはない」


俺と狐芙はそれぞれの毛布に座り、周囲を警戒する。


---


しばらくして、後ろからパキッと音がした。


振り返る。ヘルクを見る。彼がうなずく。ヘルクはゆっくりとディシアのそばに歩き、狐芙も立ち上がってヘルクの隣へ行く。


刀を抜き、木に近づく。半分だけ体を乗り出す。木の後ろには誰もいない。振り返ると、ディシアたちが既に起き上がり、低い姿勢で警戒している。


「後ろだ!陌鋒!」


ディシアが叫ぶ。


振り向くと、フードをかぶった男が刀を振り下ろそうとしている。剣で受けると、突然、体が後ろに持っていかれて、ドスンと地面に倒れた。


ドーンという轟音と共に、火球がその男に命中し、吹き飛ばされる。手をついて起き上がる。ディシアが後ろから駆け寄り、大剣が頭上を通り過ぎて男を貫く。バタリと倒れ、血しぶきが顔にかかる。死体をまばたきしながら呆然と見つめる。


「陌鋒!ヘルクのそばへ!」


這うようにして立ち上がり、刀を拾ってヘルクのそばへ走る。ディシアもすぐに戻り、全員で円陣を組む。狐芙が中央で小刀を構えている。


森の中からガサガサと音がして、十数人の男たちが現れ、俺たちを囲んだ。


一斉に襲いかかってくる。


ディシアが前に飛び出し、一人を倒す。その勢いで半回転し、もう一人を斬る。さらに前に進む。


大進と平野は連携して戦う。大進が攻撃を受け止め、平野が倒した男にとどめを刺す。


俺の前には三人の敵が迫る。


轟音と共に炎が飛び、一人の敵を襲う。悲鳴を上げてその男は倒れた。


ヘルクが素早く刀を抜き、もう一人の敵に立ち向かう。


最後の一人が突っ込んでくる。奴が右から刀を振り下ろす。俺は剣で受ける。ガキンという音。奴はすぐに刀を引き戻し、上から振り下ろす。俺はまた受ける——が、体が右に傾く。足首を何かに蹴られた。


ドスンと倒れる。奴が再び刀を振り上げる。慌てて左手で刀を掴み、掲げる。


大剣が男の体を貫く。バタリと倒れる。呆然とそれを見つめ、振り返る。


狐芙が背後に立ち、小刀を握っている。


「大丈夫?」


肩に手を置いて尋ねる。


まばたきしながら彼女を見て、また死体を見る。ゆっくりと立ち上がる。


---


ディシアたちが死体を森の中に運ぶ。木に寄りかかって座る。土を見る。血が染み込み、暗赤色に変わっている。顔の血はもう乾いていた。


ディシアが布を狐芙に渡す。狐芙がそれを持って近づく。


「はい」


狐芙が布を差し出す。水で濡れた布だ。それを受け取り、顔や首、手を拭く。


木に寄りかかって座っている。布を持ったまま。


彼女は何も言わず、ただ隣に座る。


---


どれだけ経ったか。ディシアがパンを持って歩いてくる。小さく千切った一切れを差し出す。受け取って、ただ見つめるだけ。


狐芙が立ち上がり、自分のマットに戻る。


ディシアが隣に座る。


「陌鋒、俺たちが人を殺したのを見て、悪者だと思ったか?」


「いや…そういうわけじゃないんすけど…初めて見たんで…」


「はあ…」


ディシアが軽く息を吐く。


「陌鋒、人を殺すのは、何があっても間違ってる。守るためだとか、何とか言ってもな。殺しは殺しだ。」


俺は黙って彼女を見る。


「でもな、どんな時でも俺たちは生き延びなきゃなんねえ。そのために覚悟しろって言ってるんじゃねえ。守るためだ、仲間を、家族を守るために準備しろって言ってるんだ」


彼女は俺を見て言う。


「人を殺すと、人は変わる。その後はもう前と同じじゃなくなるんだ。はあ…俺が初めて人を殺した時も、今のお前と同じだったよ。殺さなきゃ俺が殺されてた。それ以来ずっと忘れられねえ。三日間まともに眠れなかった。ずっとそのことばかり考えてた。陌鋒、お前も覚悟しとけ。でもな、俺はお前に人を殺させるつもりはねえ。誓うぜ。少なくとも俺とヘルクがいる間は絶対に」


「ただ…気持ち悪いっすね。それに…ちょっと怖かったです」


頭をかく。


ディシアが笑って言う。「誓うよ」


うなずく。


---


マットに横たわり、目を閉じて眠ろうとする。眠れない。空と星を見る。体の下の土にはまだ血が染み付いているかもしれない。


隣で物音がする。狐芙が自分のマットを引き寄せていた。彼女が横たわり、手の甲でそっと俺の腹を叩く。


彼女を見ると、彼女も俺を見ている。何も言わず、俺は欠伸をして、再び目を閉じた。

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