3.魔力鑑定
7月22日。
今日だ今日だ〜魔力測定、魔力測定〜!
急いで服を着込み、剣を腰に差して、家を飛び出した。
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冒険者ギルド。
「緊張すんなよ、陌鋒。仮に魔法が使えなくたって大した問題じゃねえさ」
ディシアが肩に手をポンと置いて言う。
「先にヤルマさんに話してくるから、ちょっと待ってな」
俺は何度もうなずく。数分後、ディシアがフロントの方から戻ってきた。
「ほら、来いよ」
彼女が手招きする。
フロントに並んで立つ。深呼吸する。やっぱりちょっと緊張するな。
「陌鋒、水晶球に手を置くだけでいいよ」
ヤルマが腰に手を当てて俺を見る。
うなずいて、そっと手を水晶球に置く。
ディシアが水晶球を見て、ヤルマを見る。
ヤルマも困惑した顔で水晶球を見ている。
「壊れてんのか?」
ディシアがカウンターに肘をついて言う。
「そんなはずないけど…ちょっと待ってね。ハク!もう一個の水晶球持ってきて!」
ヤルマが叫ぶ。
俺は眉をひそめてディシアを見る。ディシアも眉をひそめて、何か考え込んでいる。
「もしかして…魔法の才能、ないってことですか…?」
「あ…いや、才能がなくても、これくらいは光るもんなんだが…?」
ディシアが首をかしげる。
「ああ、大丈夫!大丈夫!たぶん、この水晶球にかけてある鑑定魔法が切れてただけだと思うから。ちょっと待ってて、ハク!早く!」
ヤルマがまた叫ぶ。
もう一つの水晶球が俺の前に置かれる。深呼吸して、もう一度手を置く。
水晶球を見つめ、まばたきする。
「もしかして…魔力に色がないってこと、あるのか?」
ディシアが眉をひそめて言う。
「私もこんなの見たことないですね」
ヤルマが言う。
「何か…検査を妨害するような物、身につけてませんか?」
ハクが尋ねる。
「いや、何もつけてねえよ」
俺はディシアを見て、また水晶球を見て、手を離して頭をかく。
ハクが俺たちを見る。「こんなケースは見たことないんですが…可能性としては、彼には魔法を使う素養がない、つまり魔力がないということかもしれません」
「そんなバカな。俺、生まれてこの方、魔力がない奴なんて見たことねえぞ」
ディシアが首を振る。
「私も見たことないですね。もしかしたら、成長の問題かもしれません。新生児の魔力鑑定で、ごく稀に魔力が検出されない例があるって聞いたことがあります。いずれにしても、鑑定料はお返ししますね」
ハクが続ける。
「あ…」
ディシアがうなずいて、俺を見る。
俺は頭をかきながら彼女を見て、前に歩き出す。振り返って彼女を見る。
「送って行こうか?戦闘の後は一日休む決まりだからな。後でヘルクに話聞いてみるわ」
ディシアが俺を見て言う。
頭をかく。「一人で戻れますよ…」
ディシアがまばたきして、5枚の銀貨を俺に差し出す。
「あ…いいですって」
手を上げる。
「元々お前のもんだ。持っておけ。今日はゆっくり休めよ。明日からまた頑張ろうな」
ディシアが肩をポンポンと叩く。
「あ…」
頭をかきながら彼女を見る。彼女はギルドを出て行く。息を吐いて、家に戻る。
自分の部屋を見回す。広くはない。動くたびにギシギシ鳴る硬いベッド、小さなナイトテーブル、机と椅子が一脚。机の隅には着替えが置いてある。燭台が一つ。魔力がなければ灯りもつけられない…電球を見る。
ベッドに横たわり、頭の後ろで手を組んで天井を見つめる。
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どれくらい経ったか分からない。ゆっくりと体を起こし、外に出る。空を見上げ、左手をかざす。指の隙間から日差しが差し込む。まばたきして、そのまま歩き出す。
しばらくして、商店に入る。干し肉一斤が25銅貨、パン二つで8銅貨…あ…干し肉、高えな…
干し肉一斤とパンを買う。道を歩きながら、空を見上げる。風が後ろから吹いてきて、半身をひねって後ろを見る。
ゆっくりと歩き続ける。空を見たり、草を見たり。
家に戻り、ベッドに横たわる。干し肉をかじりながら、天井を見つめ、まばたきする。
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どれくらい経ったか分からない。ゆっくりと目を開け、ベッドを下りて外に出る。太陽を見る。オレンジ色に染まり、空も同じ色に染まっている。
村を出て、大きな木に寄りかかる。前方と空を眺める。右の方からササッと音がして、顔を出す。ディシアだ。
「あ…姉貴!どうしたんすか?」
「ちょっとぶらついてただけだ。お前こそ、何してんだ?」
「あ…景色でも見ようかなって」
言うと、ディシアが隣に座る。
「あ〜、魔力測定のことまだ引きずってるのかと思ったぜ」
ディシアが尋ねる。
「あ…別のこと考えてましたよ。えっと…初めて会った時、姉貴に助けられたなって」
「ああ、狩りの対象だったクローウルフに追われてた時な」
「それで仲間に入れてもらって、剣も教えてもらって。たまに、どうやって感謝しようかなって考えるんです」
「陌鋒、感謝なんて考えなくていいんだよ。お前はただ、真面目に剣術を学べばいい。どうしても感謝したいって言うなら、強くなれ。そしていつか金を稼いでから、ちゃんと返してくれればいいさ」
「戦ってるときに、自分がどれだけ弱いかって思い知らされます。姉貴、あの時もし皆が来てくれなかったら、あの子たちを助けられませんでした」
少しうつむいて言う。
「お前はできるさ、陌鋒。できるって信じることが大事なんだ。自分より強い相手と戦うからこそ、強くなれるんだろ?あれこれ考えすぎるなよ。やるべきことは一つ、自分はできるって信じることだ」
俺はディシアを見る。「実は…もう冒険者を続けるべきじゃないのかなって、考えてたんです」
ディシアは何も言わず、俺を見ている。
俺は彼女を見てまばたきし、口を開きかけては閉じる。
「ただ…足を引っ張るのが怖いんです…」
ディシアは立ち上がり、俺の前に歩いてくる。陽の光が彼女の全身を照らす。
「陌鋒、お前が剣を抜く理由は何だ?」
顔を上げて彼女を見る。まばたきする。
「剣を抜く理由…?」
「ああ、陌鋒、お前が剣を抜く理由は何なんだ?」
口を開け、まばたきする。「俺は…家族を守りたい…でも…」
彼女は歩み寄り、手を俺の肩に置く。「それで十分だ、陌鋒。俺はお前を信じてる」
ディシアが微笑みながら言う。
「でも…」
「信じてるって言ってるだろ、陌鋒。お前にできると信じてる」
まばたきして彼女を見る。
「明日もお前が必要だ。帰ろう、陌鋒!」
うつむき、また彼女を見てうなずく。「はい」
家に帰る道を歩く。陽の光が俺たちを照らす。
「灯り、点けてなかったのか?」
陌鋒が言うと、ディシアが灯りを点ける。
頭をかく。「魔力ないから、前から点けられなかったんすよ」
「あ〜、点けられないなら、何で言わなかったんだ?」
ディシアが自分の額をパンと叩く。
「面倒かけようと思って。自分で何とかできることは何とかしようかなって。それに、帰ってきたらすぐ寝ちゃうし、別に大丈夫なんで」
「面倒とか思うなよ。夜飯は?おごってやろうか?」
「いいですって、昼に干し肉買ったし」
「じゃあパンだけか?」
うなずくと、彼女はポケットから銀貨を五枚取り出し、机の上に置く。
「たまにはちゃんとしたモノ食えよ」
「いいですって!」
「ダメだ。受け取らなかったら、怒るぞ。じゃあ、戻るわ、陌鋒。ちゃんと自分を大事にしろよ」
ディシアが肩をポンポンと叩いて言う。
外まで見送り、部屋に戻り、顔を上げる。
「あああ!灯り消し忘れた!」
大家さんに消してもらう。ベッドに横たわり、足を組む。
「あ〜、これから頑張らなきゃな。姉貴があんなに期待してくれてるんだし〜」




