1.始まり
328年
7月19日
まだ外が薄暗い中、ベッドで目を覚ました俺は大きな欠伸を一つ。目をゴシゴシ擦ってから服を着込み、宿を出た。
「今日はどんな依頼があるかな…」
十分後、「冒険者ギルド」と書かれた建物の前に着いた。後ろ頭を掻きながら、ドアを開ける。
中には人がたくさんいた。表通りにはほとんど人気がないのに、だ。
左右を見渡すと、左側に5人の姿が見えた。俺の仲間たちだ。
「おはようございます!姉貴!狐芙、ヘルクさん、平野さん、大進さん!」
「姉貴」と呼ばれた女性が振り向いた。
「おう、陌鋒、来たか。今日はでかい獲物だぞ」
「もう依頼は決まったんですか?」
ヘルクが言った。「いつも通りでいい、陌鋒」
「わかってる」姉貴——ディシアはそう言って、もう一度俺を見た。
「お前の役目は狐芙の護衛だ。村の西に出たオーガ二体の討伐、場所はカルパー湖の近く。上手くいかなければ、明日になるかもしれない」
全員が頷いた。
平野が顎に手をやる。「オーガか…この辺じゃ珍しいな」
大進が平野を見て、それから陌鋒に向かって言った。「初めてだろ?あれはめちゃくちゃ気持ち悪いぞ」
俺は思わず眉をひそめた。「本当か?」
「本当だよ。口の中黄色い牙だらけで、口臭もすごいんだ。ははは!」平野が笑った。
俺がますます顔をしかめて瞬きしていると、ディシアが言った。
「そんな怖がらせなくてもいいだろ。確かに…初めて見たらちょっと引くかもしれないけどな」
すると狐芙が口を開いた。「ディシアさん…私も無理です…あんなの…」
「出発しよう」ヘルクが言った。
みんなで町を出て歩き始める。ここ「カルパー」は帝国の境目にある村だ。
先頭を歩くのは姉貴。背中に大剣を背負っている。身長は俺より頭半分ほど高い。うちのリーダーだ。
次がヘルク。物知りで、魔法使いらしい。でも魔法を使ってるところは一度も見たことがない。使っている武器は長刀だ。
その後ろに平野と大進。みんなすごく強い。俺よりずっと…。
狐芙は行商人だ。最初は金を払って雇ったんだ。冒険に必要なものをいろいろ用意してくれるが、店より高いんだよな…。
四時間ほど歩いただろうか。
「カルパー湖…こんなに大きい湖、初めて見た…」俺は言った。
「湖には人魚が出るって話もあるぞ」ディシアが言う。
「え?本当か?人魚って…危ないのか?」
「はははは!」みんなが笑った。
「ああ…からかうなよ」ヘルクが言った。
「悪い悪い、冗談だ。ちょっと休んで昼飯にしよう」
二十分ほどして、ディシアが鍋をかけ、狐芙が茶碗を配り、大進と平野がじゃがいもの皮を剥き、ヘルクが肉を切る。俺は木に寄りかかって、ディシアを見ていた。
グツグツ、グツグツ…鍋の中でじゃがいもと肉が煮える音がする。みんなで火を囲んで座る。
「もうすぐできるぞ」ディシアが言う。
「もう匂いがしてきた!」俺は仰向けに寝転んで言った。
さらに十分後、みんなが茶碗に芋煮をよそって食べ始める。じゃがいもは柔らかいのもあれば、少し硬いのもあった。でも、どれも美味かった。
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三時間後、二体のオーガを見つけた。二メートルはありそうな巨体に、四本の牙が突き出し、そこら中に悪臭を撒き散らしている。
「準備しろ!行くぞ!」ディシアが大剣を掲げ、正面から突っ込む。
ヘルクは左側を固め、平野と大進が二体の距離を取る。俺は狐芙の前に立ち、刀の柄を握りしめた。
ディシアがオーガに向かって跳ぶ。大剣を振り下ろすと、オーガは棍棒で応戦したが、ガキンという音と共に一撃で折れた。そのまま大剣はオーガの右肩に深く食い込み、右腕が落ちる。断末魔の叫びを上げて、一体が倒れた。
ディシアは空中で半回転、その勢いのまま着地して滑る。もう一体は背を向けていた。間髪入れずに駆け寄り、再び一閃。二体目もあっけなく倒れた。
ディシアが剣を地面に突き立てる。俺は走り寄り、彼女の背中の剣帯を締めてやった。
「よし」
「ありがとう、弟分」ディシアが背筋を伸ばして言った。
「なんか、言うほどすごくなかったな」俺は首を傾げた。
「ディシアがいるからだろ。あの人がいなきゃ、あんな一撃は無理だ」大進が腕を組む。
「剣や刀じゃ、致命傷にならなきゃ手間取るからな」平野も続ける。
ヘルクが言った。「戻ろう、陌鋒。日が暮れる前に着く」
太陽が傾く中、ギルドで報酬を受け取り、解散した。風呂で汗を流し、宿に戻る。
ベッドに仰向けになり、天井を見つめる。
俺の冒険は、まだ始まったばかりだ。
まだ早いけど…寝るか。




