第6章
彼と音信不通になった。
次のお見合いの話がきていたけれど、どれも決まらず3ヶ月が経とうとしていた。
そのころには藍さんへの気持ちの整理はついた。この3ヶ月、中国語を勉強する気にはなれず、何も考えたくなくて、小説ばかり読んで現実逃避をしていた。
何度も何度も彼にメールを送りたい衝動に駆られたが、結局彼に伝えようとする気持ちは言葉にならなかった。
久しぶりに誰かを好きになって、自分の中で少し変わったことがある。
投げやりだった。自分の人生どうにでもなれと思っていた。
私と結婚してくれる奇特な人が居るなら、私の気持ちは押し殺して結婚に応じるつもりだった。
今までだったら、相手が望めば誰とでも結婚するつもりだった。唯一の条件は生理的に嫌悪を感じない人。でも、これからは真剣に向き合おうと思った。
結婚に対する気持ちは投げやりだったけれど、お見合い相手との付き合いはいい加減にしてきたわけじゃない。自分なりに出来ることは一生懸命にしてきた。それでも、お見合いは上手くいくことは無かった。自分の中のどうでもいいという考えは相手に見透かされていたのかもしれない。
失恋して初めてのお見合いに臨んだ。
お見合い写真も見ず、プロフィールも見なかった。自分の見たこと、聞いたことだけを頼りに相手と接してみようと思った。相手と接して感じたこと、それが一番大事なことだろう。相手が自分をどう思っているか推し量ることをせずに、自分の気持ちを大切にしよう。自分が相手をどう思っているか、それが一番大切なのだと思う。
九回目のお見合い相手、田畑祐司とは、序盤それなりに上手くこなした。
お付き合いに発展し、まともなデートはしたことが無かったけれど、彼とは一晩を過ごした。
避妊もせずに、拒まなかったのはSEXへの好奇心と、やはりどこかどうにでもなれという投げやりな自分だった。結局、そう簡単には自分は変われないのだろう。
彼とのSEXは自分がいかに冷めていたか、冷静でいられたことが不思議でならない。気持ちよさなんて一つも感じられなかったのは、私の体の問題か、気持ちの問題か。
それにしても、自分が好きでもない相手と寝られる貞操感の無さが痛かった。
正直、妊娠したら責任とってもらうというより、堕胎させてもらうという感情が優先している。彼には恋愛感情が無いけれど、結婚してもいいと思う。ただ、SEXはしたくないし、彼の赤ちゃんが欲しいとは思わない。彼と自分の間に生まれた子供を愛せる自信は無い。
お互い何も知らない。結婚してから、お互いのことをじっくり分かり合うことも出来るだろうけど、少なくとも私の方は、結婚前に将来自分の夫になるであろう人には話しておかなければいけない過去がある。
気持ちが無いのに、お互い心を通わせる前に体を繋げてしまった。このことをはっきりと自覚した途端、私は彼に心を開けないだろうと悟った。
メールには下ネタ満載でそれが気持ち悪くて、返信するのも嫌になった。一緒に行く約束をしていた花火、その後彼の家に泊まるのが嫌で、約束をキャンセルした。
その後、一度食事したけれど、話しているのも疲れた。誕生日に会いたいと言われたが、自分の誕生日はもう大体予定を立ててしまっていたので会えないかもしれないと言っておいた。
誕生日の前日にメールで会えないと送ったら、別れを切り出された。そのメールは私が浮気していると決め付ける内容で、ナイフで切りつけるような言葉の暴力だった。
実際には浮気なんてしていなかったから、そんな二股かけるような人間だと疑われた時点で付き合ってはいけないなと思った。正直、田畑さんを愛してはいなかったし、藍さんへの想いがあったから二股していないとはいえないけれど、不誠実だったことは認めるしかない。
謝罪をこめたメールを返信し、別れを了承した。すると、手のひらを返したように友達で付き合っていこうとメールを返信してきた。一度出したメールは相手が消さない限り残っているわけで、あんなメールを送りつけておいて、友達で付き合っていこうなんてメールを送れたなと、彼の思慮の浅さに苦笑するしかなかった。
無理だと思う。彼には時々話が通じないときがある。彼を理解しきれないし、彼には私を受け入れる度量の大きさは無い。
このことが決定打となり、関係を終わらせることになった。




