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第3章

 彼とメールを交わすことはドキドキした。

 久しぶりのトキメキだった。

 二年前から始めたお見合は散々だったのかもしれない。結婚するという結果が出ていないのだから、『だったのかも』なんてはっきりしない言い方は避けた方がいいのかもしれないが……。

 

 最後に人を好きになったのは、20歳の頃。それから9年経った。

 どうすれば人を好きになれるのかわからなくなっていた。恋愛の仕方を忘れてしまった。どうやったら本気で人を好きになれるか真剣に悩んだりした。

 でも、人を好きになれる方法なんて無かった。その人に出会えば自然と好きになれるものだ。好きっていう感情は、頑張って努力して得られるものではない。そんな簡単なことを忘れていた。

 このことを思い出させてくれたのは、まだ会ってもいない言葉を交わすだけの藍だった。

 

 初めて会話した日からどんどん惹かれていった。彼に対しての好きという気持ちは、変化しつつあった。この感情の変化は私に戸惑いを与えた。

 何もかも諦めて結婚する意志を固めていたのに、好きになりそうな人に出会うなんて……。結婚に対して迷いが生まれた。

 やはり彼とはタイミングが悪い気がする。

 

 私は結婚には何も期待していない。愛せる人に出会えても、その人が同じくらいの想いを返してくれる。そんな奇跡があるだろうか。そんなこと、私自身に起こりえるとは思わない。

 永遠に続く愛なんて無い。だから、嫌いじゃない人と結婚すれば、最後まで添い遂げられると思う。好きにはなれなくても、嫌いじゃないなら一緒にいるのも苦痛にはならないだろう。そう、考えていた。


 彼に自分からメールを送信するのを控えるようになった。それは自分の無意識の防衛だと気付いたのは、彼からのメールを心待ちにしている自分を認めたときだった。だんだん怖くなった。彼へと向かう自分の想いが恋愛感情に育ってしまう予感が心の何処かにあったのだろう。

 けれど、いつのまにか芽を出した感情は、水や栄養を与えなくてもすくすくと育ってしまっていた。


 いったん自分の感情を認めてしまうと、今までこの感情に気付かなかったことが不思議でならない。

 この感情を消すことが出来ないのは、自分には一番良くわかっている。もう、退くことは出来ない。前に進むしか道は存在しない。


 実際、会ってもいない人に本気で恋愛感情を持つことが出来るなんて思っても見なかった。

 でも、有り得ないことではなかった。

 私の今までの恋愛は、人の内面に惹かれてから恋愛感情に発展するパターンだ。

 ネットで知り合った人と、メールを交わすうちに好きになることはあるかもしれないと思っていた。有り得ないことではないと思っていたからこそ、一番恐れていたことでもある。

 自分が結構惚れやすい性格だと自覚している。


 この恋愛は自分の人生に黒い染みを落とした。

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