東京メトロ浅草駅ダンジョン 17
彼女はフリーランスの潜行者の集まりである様々なギルドの取締役的な立場の人物であるからだ。
前に百合から聞いた通りある程度彼女からは信頼されているらしいが、それがどの位のものなのかは俺は計りかねている。
何せ今のダンジョン対策本部の組織を作る際一度誘いを断られている。
彼女なりに考えがあっての事なのだろうが、今の対策本部とギルドの関係性を考えると何とも言えない。
下部組織がそうなだけで彼女の考えは違うのかもしれないが、それを知るための対話が俺達には圧倒的に不足している。
言い訳になるかもしれないが組織作りに奔走させられ、その他に費やす時間が無かったからである。
おそらく彼女の方もそうだろう。
幾ら大きなカリスマ性があろうと大きな組織を作ろうとすると時間が掛かるものだ。
ましてや考え方がバラバラな組織を纏め上げるなどどれ程頭の痛くなる事が連続する事か。
ダンジョン対策本部が比較的早く出来たのはある程度纏まった考えの者達で発足したからに他ならない。
癖の強そうなギルドの面々を纏め上げたのだ、その苦労は計り知れない。
そんなこんなで彼女も忙しかったのだろう2人でまともに話したのはもう10年以上前だ。
それ以降は会議でのやり取りしか記憶に無い。
幸いな事に今の彼女は微笑みを浮かべ機嫌が良い様子。
今の内に彼女の心の内を聞いてみる事にしよう。
「じゃあ話は戻るが、ギルド連盟の取り締まりである美白がなぜここに?しかも俺がこのタイミングで来る事が分かっていたみたいじゃないか?」
「そうでした。お教えせねばなりませんね。ここに来たのは貴方様にお願いがあるからです。タイミングが今だったのはお互いの時間の都合と言った所でしょうか。貴方様も私も忙しい身の上ですから…。それに私が観た中ではこの時が一番落ち着て話せると思ったのです。」
「お願いとは?それに見たと言ったか?まさか未来予知だなんて言い出すんじゃないだろうな。」
俺は内心の驚きを隠しながら表面上は冷静を装う。
今言った事が本当ならとんでもない事だ、頼むから冗談であってほしい。
「貴方様には説明せねばなりませんね。私沼須喜 美白は位が上がった事で条件付きでございますが予知能力の様なものが出来るようになったのです。」
「マジか…。」
美白は隠しもせずにそう答えた。
薄々そうではないかと思ってはいたが何で悪い方の予感ばかりが的中するのか…。
俺は最早呪いなのではないかと思い憂鬱な気持ちを抱くのだった。




