東京メトロ浅草駅ダンジョン 9
俺は胃が痛くなりそうな気分になりながら歩みを進めた。
その後特にモンスターと遭遇する事も無く更に進んだ先、ほぼ直角の曲道を曲がった時それは唐突に現れた。
結晶の淡い青色とは違う光が先にある出口と思われる場所から差していた。
「どうやらもう少しで出口の様だな。ここまで結構距離があったが大丈夫か?」
百合の方を向き声を掛ける。
するとそこには膝に手を着き肩で息をする百合の姿があった。
『ぜひぃ、ぜひぃ、だ、大丈夫に、みえる、のかね?』
「全く見えんな。前にも言ったが少しは体力をつけた方がいいんじゃないか?見ていて心苦しいぞ。」
『体を、動かすのは、昔から、苦手、なのだよ。苦手な事は、なるべく、したくないだろう?』
「言いたい事は分かったから無理に喋るな。さっきまで元気にはしゃいでいたのが嘘のようだな。ほら、敷物を出してやるから少し横になって休むと良い。」
俺はバッグからマットレスを取り出しなるべく水平な地面に敷くと百合の手を取りその場所に誘導した。
すると百合は倒れ込む様に横になり自身のバッグから酸素スプレーを取り出し吸い始めた。
「運動不足か運動音痴か、どちらにしても相当だな。」
『ぷはー!どちらもで間違いないのだよ。そもそも普段からダンジョンに潜っている君たちの様な潜行者と普通の研究者を同じに思ってもらったら困るのだよ。相棒は何とも思ってないかもしれないけれど、このダンジョンに入ってからかなりの距離を移動しているのだよ。』
「水飲むか?まあ報告書にも崖に出るまで半日かかったとあったから大体の距離感は分かっているつもりだよ。尤も第四部隊のは安全確保や調査をしながらの時間だから真っ直ぐ行けばそこまで時間はかからないんじゃないか?」
『ありがとう、いただくのだよ。前々から規格外だとは思っていたが相棒の位とレベルはどれ程なんだい?』
「…それはトップシークレットだな。」
『むぅ、いけずなのだよ。』
多少は落ち着いたのか、百合は横になっていた体勢から足を投げ出して座っている。
もう少ししたら抱えてでも進んで出口の先を確かめよう。




