東京メトロ浅草駅ダンジョン 8
軽く雑談し小休止をとった。
小休止を挟んだ後、再び探索を開始して洞窟の更に深くへ来た。
青色の水晶の密度が少し増え、道幅は少し狭くなっている。
相変わらず洞窟内でモンスターとは遭遇していないし気配も感じない。
ダンジョン内だというのにここまででモンスターと遭遇しない事は基本ありえないが、今それが実際に起きているので信じる他ない。
この場の特殊な魔力がモンスターに対して一種の忌避剤の様に働いているのか、それともモンスターはこの場を認識する事が出来ないのか…。
どちらにしてもこの場所の魔力を研究すれば、採取を目的とした潜行者にとって便利な物が出来る事だろう。
その為にはこの場所の魔力を感じ取れるかという高いハードルがあるが、それはまた別の話になる。
何はともあれ今は湖の探索並びに研究が最優先だ。
百合に言った手前俺が余計な思考を巡らせるのは失礼と言うもの。
今はこのどこまで続いているか良く分からない洞窟を無事に進む事に集中しよう。
『ふうむ。ここまで長いとスマホの充電が心配なのだよ。予備のバッテリーと魔力式簡易発電機があるとは言えモンスターがいなければ魔力結晶も無いのだよ。』
「おいおい。何時の間に魔力式の発電機を持ち運び出来る大きさまで縮小出来たんだ?世紀の大発明じゃないか。」
『ああ、これかい?この間研究がひと段落した話をしただろう?それがこれなのだよ。結晶装備の充填を参考にボクなりに作ってみたのだよ。まだ発電量はそんなにだし、魔力結晶の大きさにもよるが理論上はペットボトルサイズの機械で二世帯家庭の1週間分位は余裕で賄える量の発電は出来るのだよ。』
「またとんでもない物を作ったな…。」
『何を言うのだよ。魔力結晶を使った発電の理論と技術があるのだから後はそれを他の理論と組み合わせて実験して形にしただけなのだよ。ボクがしなくてもいずれ誰かがたどり着いたのだよ。』
「何と言うか、百合が本物の天才だという事を再認識したよ。取り敢えずそれは他言無用で頼む。」
普段が普段だけに忘れそうになるが百合は魔力から電気エネルギーを作り出す理論を完成させ、過去からあるエネルギー問題を解決に導いた天才だ。
彼女にとっては普通の事なのかもしれないがそれがどれほど世間に影響を与えることか、フォローする側の気持ちも少しは考えて欲しい。
俺は胃が痛くなりそうな気分になりながら歩みを進めた。




