東京メトロ浅草駅ダンジョン 6
そんな呑気な事を言う百合を連れ、俺は崖の洞窟に足を踏み入れた。
洞窟内は淡く光る青色の結晶が至る所に生えていて辺りを薄い光で照らしている。
道のりは今の所一本道で地面は固く意外と歩きやすい。
『この結晶は洞窟型ダンジョンで時折見つかる物とおそらく同じものなのだよ。』
「分かるのか?流石だな。」
『おそらくと言ったのだよ。ボクもきちんと調べないと全く同じ物かは分からないのだよ。なのでサンプルとして1つ貰って行くのだよ。』
「ここ入るまでに結構採取していたみたいだが持ち切れるのか?」
『持てる訳ないだろう?見るのだよこのボクの細腕を。おや?この苔は珍しい種だったはず。これも持って帰るのだよ。』
「おいまさか俺が持って帰るのか?」
『当たり前なのだよ。知っての通りボクは普通の人より運動が少しだけ苦手なのだよ。草や苔の様な軽い物ならともかく、鉱石や結晶は重くて持てないのだよ。相棒にはダンジョン研究の進歩の為に協力お願いするのだよ。』
「…。」
この様な感じで何かを見つけては採取し進みを繰り返したため俺達の進むスピードは随分と遅くなっていった。
いっその事また抱えて行こうかと思ったが百合が楽しそうなのでそれは憚られた。
そして不思議な事にここに入ってからモンスターに遭遇していない。
この場所の魔力がおかしかったので、ダンジョンの法則に外れた場所なのかもしれない。
今の所は気配察知にも何も反応は無いため大丈夫だと思うが油断はしないようにしよう。
何か悪い事の起こる前触れでなければいいが…。
そんな俺の考えを知ってか知らずか百合は呑気に鼻歌を歌いながら採取作業にご熱心な様子。
採取用に特殊なバックパックを持参していた為、ある程度は無理なく持って帰れるだろうがこの探索ペースで大丈夫なのだろうか。
俺は此処の違和感と百合のマイペースさに一抹の不安を覚えながらも先に進んだ。




