東京メトロ浅草駅ダンジョン 1
例の湖に関しての緊急臨時隊長会議が終わり数日後、俺は百合と共に発見場所である東京メトロ浅草駅ダンジョンにやってきていた。
目の前にはバリケードテープで閉鎖された苔むした暗い穴が口を開けており、とても半年ほど前に出来たモノとは思えない年季を感じる。
『いやはやようやくこの日が来たね。最早この方が正常と勘違いしてしまいそうなのだよ。』
「全くだお役所仕事はこれだから困るよな。」
『一応ボクも相棒もお役所勤めみたいなものなのだよ。まあ全く以って同意なのだよ。ボクも相棒も部下に頭が上がらないね。』
「それも同意見だな。俺にはもったいない位優秀な部下達だよ。今度飯でも奢るか?」
『それはいいね。是非金持ちの行くノンダンジョン産のお店に連れて行くといいのだよ。ボクは二度と行かないけどね。』
「…なら別の所にするか。最近ダンジョン食材を持ち込んで料理してもらうのが潜行者の間で流行っているらしいし、そういうお店にするか。」
『相棒が何を持ち込もうとしているかは分からないが、少なくとも店主は二度驚くことになるのだよ。物によっては腰を抜かすかもしれないのだよ。』
2人で軽口を叩き合いながら入り口を見る。
百合も笑っている所を見るに緊張はそんなにしていないらしい。
「資料を読んだ限り強いモンスターやトラップの類は無いみたいだ。油断する気は無いが十分に気を付けてくれよ。」
『相棒が油断しないと言うならそれが全てなのだよ。ダンジョンの中でも外でも一番の安全地帯は相棒の近くさ。初めて潜るとは言えど何か問題があるのだよ?』
「信頼されているのは嬉しいが程々にな…。だがまあその通りだがな。さっさと見つけて百合を元に戻さないとな。」
『うむ、慣れたとは言え色々と不便だからね。なるはやで頼むのだよ。』
「はいはい、では早速潜りますかね。変なアクシデントは無しで頼むぞ。」
こうして俺達は黄色のテープをくぐり、東京メトロ浅草駅ダンジョンの中に潜るのだった。




