東京メトロ浅草駅ダンジョン
只野 優人の独白 Ⅴ
更に時が経ち俺は様々な場所を発見しては驚ていた。
今までいた洞窟の様な暗い場所を抜けたかと思ったら周りは一面の緑に覆われたジャングルの様な場所で、明らかにコンクリートに囲まれた東京とは明らかに違った。
洞窟の入り口から漏れる光を見て喜んだ俺は一度呆然となり心が折れかけたが久しぶりの外の光だと感動したのも事実だった。
そして何よりここには湖があり水があったのだ。
焦がれていた洞窟の中にあった水溜りの様な小さいモノではなくちゃんとした水場。
湖を見た瞬間俺は歓喜に震え何も考えず飛び込んだ事を覚えている。
更にここには見た事は無かったが食べられる野草や果物、スパイスが自生していたのだ。
識別方法は勿論実際に食べてみて毒がありそうか、お腹を壊さないかの力業だったが今まで肉を焼く事しか出来なかった俺の食生活はここに来て一気に充実したものになった。
木材も充実していて簡易的なシェルターを作ったり、木をそのまま削り出して浴槽にして風呂にし、動物の脂肪と料理やお湯を沸かした際に出てくる灰で石鹸を作ってみたり。
意外と理科の実験や家庭科の実習は役に立つんだなと感心したりした。
そしてここの生き物たちにははっきりとした弱肉強食がある事も分かった。
弱い生き物は角の生えたウサギやでかいネズミ、それを3mを超える大きさの狼や蛇が喰らい、更にそれを8mを超える様な大きさの鷲に似た猛禽類や熊の様な生き物が喰らうという事が散見された。
食物連鎖の頂点と思われる生き物を見ても不思議と恐怖心は無く倒せそうだなと言う感想しか出て来なかった。
事実その生き物達は洞窟の生き物よりも強かったが俺の敵ではなかった。
暫くすると俺の1日はある程度のルーティンが出来上がっていた。
そんな中のある日俺は出会った。
湖に浮かぶように立つ角の生えた純白の馬に。




