元教え子 東 紅 1
「先生!お久しぶりです!」
正面から溌溂とした声を掛られる。
事前に気配で察知していた通り、そこに居たのは上司の孫娘 東 紅 その人である。
奇麗な顔に、何も言わずともご機嫌だと分かる笑顔を浮かべている。
「久しぶりだな、東。活躍は聞いている。隊長会議でも期待の新人と言われていたぞ。」
「そんなっ、全ては先生の指導の賜物です!」
「そう言ってくれるとは、立派に育ってくれて、俺も鼻が高いよ。」
自分の活躍が認めれて嬉しいのか、表情にさらに喜色の色が増す。
「今回は先生との共同作戦と聞き、喜び勇んで参上しました!」
まさに喜色満面といった表情で敬礼をする紅。
敬礼を返しながら、釣られてこちらも頬が緩む。
年頃の女性にこう思うのも失礼かもしれないが、懐いた犬みたいで微笑ましい。
「それは頼もしいな、では今回はお手並み拝見と行こうか?」
「はい!私もあれから位も上がって強くなりました!足手まといにはなりません!」
彼女の目を見る、その赤い目には確かな自信が浮かんでいる。
「入学した頃とは雲泥だな。本当に強くなった。」
「そ、その話は勘弁して下さいぃ…。私の黒歴史と言うか恥部と言うかぁ…」
冗談めかして過去に触れると、彼女は顔を真っ赤にし、言葉尻をすぼめた情けない声が返ってきた。
少し意地悪し過ぎたかもしれない。
彼女はもう学生ではないのだ、それ相応に対応してあげなくてはならない。
切り替えよう。
「ゴホン、とりあえず合流は出来た、速やかに旧新宿駅ダンジョン前駐屯地に向う。私は着いたら各部隊に声をかける。君はその間にダンジョンに潜る準備を済ましておいてくれ。」
「ハイッ!了解しました!第一部隊隊長!」
俺の雰囲気が変わったのを察したのか、彼女は表情を引き締め再度敬礼し裏口のドアに向かって行った。
この様な言い方は偉そうで、あんまり好きではないんだがなぁ…。
俺は心の中で溜息を吐きながら彼女の後に続くのだった。