緊急臨時隊長会議 5
俺も資料を確認しようと視線を手元に落とした瞬間、扉の向こうから言い争う様な声が聞こえて来た。
こちらに近づくにつれて内容が聞こえてくるが、どうやら男女が言い争っているらしい。
扉を挟んで少しくぐもってきこえるが、その声は男女の声で聞き覚えのある声だ。
『私が悪いと!そもそもですねぇ!……』
『なんだってぇ!アタシ達の創ったモンに文句あんのかい!大体テメェは……!』
他の隊長達にも聞こえているのか頭を抱えていたり笑ったり表情が見えなかったり各々反応を示している。
俺も頭を抱えたくなったが我慢して毅然と構える事にする。
その声は扉前に着くと一度静かになり一息置いてノックの音が扉から響き、女性の「失礼します。」という声と同時に扉が開かれた。
先に入って来たのはウルフカットされた赤毛の髪に日焼けしたかの様な褐色肌、タイガーアイの様な茶色の瞳の女性で、隊服を着崩しスタイルのいい肢体を惜しげもなく晒している姿には眉を寄せるのを禁じ得ない。
しかし仕事が終わり次第直ぐに駆けつけてくれたからか、腰や太腿辺りには彼女が愛用しているウエストポーチやレッグポーチが工具が入ったまま付けられている。
忙しい所を無理を言って来てもらったのだ、服装程度言うものではない。
それはそれとして上半身に反して下半身がごちゃごちゃしてて守備力高そうだなとどうでもいい感想を抱いた…。
彼女はダンジョンにおける安全確保と前線基地の構築を主な仕事としている第八部隊隊長の土倉 計理ダンジョンに集団で籠ることの多い部隊な為、 隊員達には母の様に慕われているが実年齢よりも大分若く見える。
本人は自覚があるのか無いのか、距離感が近く時たま反応に困る。
「頭領久しぶりだね!詳しい事は会議で聞くが、何か創るならアタシ達にドーンと任せな!」
「急な呼び出し申し訳ない。ありがとう、その時は遠慮せず頼らせてもらうよ。」
「おう!そうしな!」
先程まで言い争っていたのが嘘の様に豪快に笑いながら話す。
それだけ言うと彼女は体に付けた工具をジャラジャラ鳴らしながら満足そうに用意された席に向かった。




