元教え子 東 紅
只野 優人の独白 Ⅱ
『経験値を獲得しレベルが上がりました。位のレベル上限になったので生き物としての位が上がりました。最速の昇格Ⅴの称号が与えられました。』
「お、久しぶりだな。」
あれからダンジョン内時間で半月程経った頃。
最初の頃は一体倒せば何かしら聞こえていた声の頻度は、かなり間隔が空く様になっていた。
そして、俺の体にも変化は訪れていた。
まずわかりやすく生肉や血を啜っても腹を壊さなくなった。
これはありがたい、レベルが上り辛くなるのに食事の度に腹を壊していちゃたまったもんじゃない。
次に筋力がついた、明らかに自分よりでかくて重い何かの生き物の死体を片手で持ち上げられるようになっていたのだ。
この短期間でのこれは筋トレしただとかでは説明が出来ない。
「確実にあるな、ステータス」
ただでさえゲームの様な声が聞こえるのだ、間違いなくあるだろう。
が、見方が分からない。
声に出してみても、念じてみても、うんともすんとも反応がない。
ただ無駄に恥ずかしいだけだった。
そして一番の変化、生き物の気配を感じられるようになっていた。
その気配から相手がどれくらい強いのか、なんとなくだが分かるようになったのだ。
気配での大体の強さは、巣に侵入してきたでかい蛇が基準になっており、今の俺なら飛んでる親鳥でも勝てる気がする。
因みに蛇は素手でも倒せた。
何気にちゃんとした戦闘は初だったが不思議と怖くなかった。
恐怖を感じなかったことに恐怖したくらいだ。
知らぬ間に自分が変えられている、そんな感覚を味わった。
兎にも角にも、位が上がった事で気配が分かる距離と精度が上がった気がする。
これはそろそろ巣立ちの時だろう。
と言うか限界だ、いい加減ちゃんとした物が食べたいし、風呂にも入りたい。
枝をほぐしてごしごしするのももう嫌だ。
俺は決心して手作りの武器を持つと、お世話になったでかい鳥の巣を抜け出した。