稀代の天才 黒川 百合 5
俺は周りを見渡し、車の間を被害が出ない程度のスピードで駆けた。
暫らく走りようやく百合の居る研究所が見えて来た。
機密事項の塊の為施設は柵に囲まれ、入り口には銃を肩に掛けた門番の警備員の姿も見える。
胸のポケットに身分証が入っている事を確認し門に近づく。
魔力を解いた瞬間警備員が驚いた様子で反応し銃口を突き付けてくる。
「…つっ!!?だ、誰だ!」
彼から見たら突然何もない所から人が現れた様なものだ、直前まで気配も消していたのでこの反応はしょうがないだろう。
いち早く誤解を解くため身分証を取り出し彼に見せる。
「ダンジョン対策本部特殊作戦第一部隊隊長 只野 優人だ。この施設の研究室長である黒川 百合教授に会いに来た。突然現れた様に登場してすまない。通してくれないだろうか?」
「…。失礼しました!黒川教授からお聞きしております。どうぞお通り下さい。」
「ありがとう。」
彼は俺の身分証を見て向けていた銃口を降ろし、敬礼をして道を開けてくれた。
俺は敬礼を返し足早に施設の方に向かう。
施設の門を潜り入り口の前にあるカードリーダーに身分証をかざすと、機械音と共に顔認証の為の機械が入り口の扉の横から出てくる。
それも終えると次はその下から透明な球状の魔力結晶が出て来て、それを握り魔力を流すと先程と同じ様に機械音が鳴り、錠が開く音が聞こえた。
この結晶は彼女の開発した魔力識別の為の物で、彼女と俺、そして魔力の感知に長けたある覚醒者と共に開発した物である。
まあ、魔力操作が得意で他人の魔力を真似れる者なら簡単に突破されてしまうと言う欠陥があるのだが…。
そんな事を考えながら扉を開け中に入ると吹き抜けになっており、正面と左右の離れた所に二階に続く階段が見える。
俺は正面の階段を上ると彼女の研究室に速足で向かった。




