12年働いた職場 5
嫌な予感が当たった。
感情を抑え上司に質問する。
「何故か聞いても?」
結果は変わらないだろうが、聞かずにはいれなかった。
東 京介の孫娘 東 紅高い成績と、目立ちすぎるルックスで卒業生の中でもよく覚えている。
上司の孫娘ということも、一因かもしれない。
「工作があったとはいえ、初期対応が遅れただろう?その組織の代表の関係者が救助したとなれば、少しは相手方の覚えが良くなると思わないかね?」
要は保身である、せめてもう少しましな理由を、嘘でも用意してもらいたいものだ。
「大事な孫娘ですよね?こんな危険な任務に就かせてよろしいのですか?」
無駄だと分かっているなけなしの抵抗である。
「君も授業や訓練も教えたのだろう?それに今回は君がいるんだ、何を心配する必要がある?そろそろ到着するから、そのまま合流して、準備を終え次第出発してくれたまえ。」
「…了解しました。」
やはり無駄だった…。
上司の部屋を出た俺は一つため息をついて、とりあえず元教え子の東 紅と合流すべく彼女の気配のする裏口の方へ向かう。
途中各部署の部屋から聞こえてくる声や人の動きを見て、どこも忙しそうにしている。
本当にはた迷惑な話ではあるが、人命が懸かっているので放置するわけにはいかない。
しかし、妨害していたのは何処の組織だろうか?結局救助出来なかったら元も子もないのでは?
いけない、考え込むのは悪い癖だ、今はやるべきことに集中しよう。
思考に沈んだ意識を引きずり上げて正面を見る。
そこには日本人ではありえない真っ赤な髪と、やや吊り上がりぎみで勝気な赤い瞳の美女が、スーツ姿で誰もが魅了されそうな笑顔で立っていた。