稀代の天才 黒川 百合 3
俺は彼女を安心させる為に口を開いた。
彼女との出会ってからどれ程だろうか、少なくとも簡単には割り切れない程度には世話になってるし、世話している。
俺としては持ちつ持たれつだと思っているんだが如何せん彼女はそう思っていないらしい。
「落ち着け百合。君が俺に迷惑を掛ける事に対して申し訳ない気持ちは分かった。」
『本当にもうs「まあ取り敢えず聞け。」』
彼女が謝罪の言葉を紡ぐ前に被せて遮る。
「何時か君から言ったじゃないか、俺と君は一心同体 持ちつ持たれつでやって行こうと。」
『そ、それはそうだけども…。』
「今回も俺が鑑定を頼んだんだ責任の一端は俺にもあるし、学の無い俺にとって君のその頭脳は何にも代えられない唯一無二なんだ。それにあの時約束しただろう?君に愛想を尽かれない限り俺から離れていく事は無いって。そうだろ相棒?今から向かうから、何時も通り目の下に隈を作ってヘラヘラ笑って待っていてくれ。」
『ぅ、うむぅ!!?』
電話越しに百合の驚いた様な声が聞こえたが、俺は受話器を置くと筆記用具や印を片付ける。
電話をしながら書類は終わらせたので、後程来るであろう部下に一応確認して欲しいという旨をメモに残し椅子から立ち上がる。
部下の彼女には申し訳ないが、メールや電話だと確実に止められるので苦渋の決断だ。
コートラックに掛かった隊長専用にデザインされた上着を羽織り、部隊識別帽を被り部屋の入り口のドアを開けて外に出る。
庁内にいる者達に気付かれない様に気配を隠蔽し外に出る。
本当に申し訳ないのだがこうでもしないと立場上自由に動けないし、親友と呼んでくれる相棒が助けを求めているのだ。
何時もの説教は甘んじて受けるので許して欲しい。
いや、魔力を使っての高速読解と高速印押しを駆使し、無理矢理仕事は終わらせたのでなるべく優しくお願いしたい所である…。
こうして俺は多少の不安を残しつつ、庁舎の外に足を踏み出した。




