稀代の天才 黒川 百合 1
旧新宿駅ダンジョン救出作戦から一週間が経ち、事後処理が落ち着いた頃。
俺は本部に設置された執務室にて、大量の確認書類に目を通しながら印を押す仕事をこなしていた。
この手の仕事が得意な優秀な部下がいるため軽く目を通すだけでいいのだが、量が量だけにかなり疲れが蓄積される。
書類を仕分けしてくれている彼女には、今度個人的に保有しているダンジョン産アイテムの中から何かプレゼントすることにしよう。
そんな事を考えながら印を押していると、部屋に設置された電話が音を立てて着信を知らせる。
何時もなら部下が対応するのだが、今は俺しかいないので俺が対応する。
単調作業に飽き飽きしてたので、少しは気分転換になるだろう…。
「ンンッ。」
水を一口飲み、無言でやっていた為に乾いた喉に水分をやり、咳払いを吐いて受話器を取った。
「こちら第一部隊隊長執務室。どうした、何かあったのか?」
『やあ相棒!ボクだよ!』
要件を聞いた瞬間に上機嫌な声が耳を打った。
溜息を吐きそうになるのを堪えながら言葉を返す。
「百合、何時も言われているだろう?仕事中に用事がある時は一度受付を通して下さいって。俺は気にしないが部下が頭を抱えてるんだ。」
『ウム!だがボクは人見知りだろう?極力ボクは相棒である君以外との会話は控えたいのだよ。』
然も当然の如く言い放つ彼女に、部下の苦労を考えて複雑な気持ちになる。
此方が言葉を返す前に彼女の方から今回の件を切り出した。
『そんな事より聞いてくれ給えよ!相棒がこの間持ち込んだ箱だがね、中身は魔法的効果の付与された指輪だったのだよ!相棒の思った通り魔力を感じさせなくなる効果が付与された物で、この効果付与された物が出たのは過去に記録に無い!資料上では前人が全く手を付けてない分野!研究が今から楽しみで堪らないよ!』
「お、おう…。そうだな。」
早口で捲し立てられ気圧されてしまい、そんな返ししか出来なかった。




