稀代の天才 黒川 百合
只野 優斗の独白 Ⅲ
あの鳥の巣から出てどれ位経っただろうか。
昼夜の概念の無い洞窟の中時間感覚は既に無くなり、落ちて来てから何日経ったかもう分からない。
よく発狂もせず動き続けているものだと自分でも驚いている。
飢えや渇きを満たす為、食べられそうな生き物を倒している間に位やレベルが上がって精神的にも強くなっているのかもしれない。
食べる量も多くなっている気がするが…。
まあ多少筋肉質になったが体形自体に大きな変化はないから大丈夫だろう。
倒した生き物の食べられない部分は、少し前に見つけた宝箱の中に入っていた背嚢の中に入れている。
不思議な事にこれに入れておけば重さも感じないし、見た目より明らかに大きい物や量が入る便利な物だ。
結構雑に扱っても中身が壊れないおまけ付きでもある。
本当に何なんだこれは…。
そして最近見えてなかったモノが見えたり感じる様になった。
それはある日異様に強い鹿の様な生き物を狩った時、その鹿の角が時折発光し閃光を伴った針を打ち出していたのが気になり色々といじくっていた時。
叩いたり砕いて齧ってみたり、発光すれば明かり代わりになるな程度の考えだったのだが、圧力を掛けてみるのはどうかと握り込んで力を込めた時に爆発的な閃光が走り一時的に視力を奪われた。
最初は驚いて軽くパニックに陥ったのだが、目が見える様になると今まで見えてなかったモノが見え、感じる様になっていた。
それは俺の中にもあり生き物によってそれの保有量は違っていて、特殊な攻撃、行動をする生き物ほど多く保有している様で、その様な動きをする度に色んな動きをする事が見えた。
取り敢えず魔力と名付けその動きを参考にしたり、自分の思い付きで動かしてみたり色々と実験してみたりした。
分かった事は魔力はイメージにより結構自由に動かせるという事。
体に纏えば身体能力が上がったり鎧や武器の役割をしてくれたり、ロープ代わりにして相手の動きを封じたり、上手く操作すれば飛び道具として狩りにも使える事。
その攻撃にもバリエーションを与えられ、刃にして飛ばしたり針や弾丸の形等 変幻自在に形を変えられるのだ。
狂わなかったのはこの作業が出来たのも影響しているかもしれない。
何はともあれ、1人で寂しいながらも俺は道中で落ちている物を拾ったり、生き物を狩りながら洞窟を進む。
この時俺はこの魔力操作は普通だと思い込んでいた。




