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元教え子 東 紅 私達は恵まれていた

世間の見方が厳しくなっていき半年が経つ頃、初のダンジョンからの生還者が現れた。



只野 優人(ただの ゆうと)日本で初めてダンジョンから生還した彼の名は瞬く間に知れ渡る事になった。

同時に、彼がもたらしたダンジョンのアイテムに世間は沸いた。


後遺症の残るような重症や、不治の病をたちどころに治してしまう秘薬。

見た目からはありえない量の物が入る魔法の袋。

無限と思われる様な大量の食料。

目も眩む程に奇麗な金銀財宝。

そして新たなエネルギー源である魔力と、その元となりモンスターから採れる魔力結晶。


どれか一つだけの発見だけでも偉業と言えるのに、彼は帰還後多くのダンジョンに秘められた可能性を示したのだ。

そこからダンジョン攻略の風潮は、一部被害に遇った遺族に不謹慎だという声も上がりながらも政府の中で広がっていく。


そこで目を付けられたのは隔離施設に入れられた私達。

奴等はとある条件を出してきた。

それはダンジョンに潜り結果によって家族や友人、大切な人に電話や面談をする機会を与える事。

上手く出来ればここから出て特別に市街で親と暮らす事も許すという事。


今の私なら民間の人達も文句は言わないという思惑が透けて見えたが、幼い私は両親に会いたくてこの提案を飲んだ。

美白さんや周りの人達は幼い私を心配して止めてくれていたが私の気持ちは変わらなかった。


私は第一次ダンジョン探索隊に志願した。

そして只野さんが帰還して一月経った頃、彼が巻き込まれた元新宿駅だったダンジョンへと向かう事となった。


ダンジョンに向かう車内は施設に来る前よりは希望を持った表情を浮かべる人達が乗っていたが、向かう途中で向けられた視線はやはり冷ややかな侮蔑を含んだものだった。

新宿駅前は黄色と黒の警戒用テープでラインを引かれ、元々改札だった所に洞窟が広がっており、まるで怪物の口の様な不気味さを覚えた。


不気味な雰囲気に怯え震える人、顔を青くしながらも自分を奮い立たせようとする人。

ここは危険だと、死の気配を嫌でも感じさせられている様な感覚に私も足が竦んで動けなくなっていた。


そんな中彼はやって来た、ここ最近のテレビで何度も見た話題の人。

彼が送迎車から降りて来た途端に場の雰囲気が変わる。

外の野次馬が私達に向けた冷ややかな視線が何かを期待するような熱い視線に変える。

きっとダンジョンから受けられる物に興味があるのだろう。


だがその時私達が感じたのは圧倒的な魔力だった。

この時始めて魔力に触れた私達はそれが本当にあるものだと、おそらく一般の人達には感知出来ないものなんだと。


私達は恵まれていた。

いままで無かった感覚が目覚めた瞬間だった。

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