元教え子 東 紅 私は恵まれていた
隔離施設に着く頃には涙は枯れ、感情は絶望で満たされ何も考えられなかった。
隔離施設に着くと男女に分けられ、それぞれ別の施設に収容された。
施設は壁に囲まれ中から外が見えない様になっていて、壁の四隅にある監視塔が外から中の様子を見張っている様だった。
幸い山奥までわざわざ罵倒しに来る人はいなかったのが救いだろうか。
女性用の施設に着くとそこで番号の書かれた紙と袋を渡され、その番号が私の部屋だと言われた。
連れてこられた人それぞれが別の部屋に行き、私も無感情で受け取り番号の部屋に向かった。
部屋は2人部屋になっており、堅い簡易的なベッドと机が2つずつ置かれているだけの簡素な作りで、ルームメイトとなる人がベットに腰掛けていた。
彼女と挨拶を交わし、自己紹介をする。
名前は沼須喜 美白長い白髪で顔半分を隠しててもわかる奇麗な目鼻立ちに尖った耳。
渡されたジャージに似たゆったりとした服の上からでもわかるプロポーションの良さ。
その奇麗な白髪に神々しさすら感じるお姉さんだった。
彼女はここでの生活の仕方を教えてくれた。
何処に何があるか、入浴や食事はどうすればいいか等だ。
幼い私を相手するのは大変だっただろうが、彼女は嫌な顔せず何時も笑顔で面倒を見てくれた。
両親に会えないのは辛かったが、彼女がいてくれたから耐える事が出来たし幼い割に聞き分けの良い私は同じ境遇の施設の人達からも可愛がられていたと思う。
外に連絡する物は無いし、娯楽等は殆ど無かったが共有のスペースではテレビやラジオを見れたり、軽く運動する場所もあったので、不自由ながら何とか我慢は出来ていた。
しかしそれも長くは続かなかった。
一週間経った位だっただろうか共用のスペースで流れていたテレビであるニュースが適合者に関して討論会を開いていた。
その内容は酷い物で、その中では適合者は悪魔付きと呼ばれ人では無いと説明され、早く処分しろや民間人のストレスの捌け口にするべきだといったとんでもない事を言い出す者までいる始末。
そんなニュースに誰もが絶句していると遠くの方で破裂音がした。
銃声だと気付くのに時間は掛からなかった。
方向と遠さからおそらく男性の施設で発砲があったらしい。
それからの施設内は暗い雰囲気に包まれていた。
発砲後どうなったのかは分からないが、連れられて来た時の外の反応、それを思い出し体が震え泣きそうになる。
私たちは一体どうなってしまうのだろうか。
あの一件以来部屋から殆ど出て来ない人も出始めた。
優しかった美白さんも表情は暗く、無理に取り繕って私を不安にさせない様にしているみたいだった。
このままここで死ぬのだろうか、皆が悲観し口数も少なくなりあの時の様な陰鬱な影が私達を包み、どうしたらいいのか全くわからず暗い闇の中に囚われる様な感覚に襲われた。
世間の見方が厳しくなっていき半年が経つ頃、初のダンジョンからの生還者が現れた。




