元教え子 東 紅 41
ダンジョンの空間にコーヒーの香りが漂った。
そこから小一時間程の間紅と、今回遭遇したモンスターや手に入れたアイテムの話をして第二部隊の到着を待った。
小箱に関しては何かあるといけないので、紅に話して俺が責任をもって知り合いの研究機関に持って行き調べてもらう事にした。
「先生の知り合いと言いますと黒川教授の所ですよね?」
「ん?あぁ、そうだな。残念ながら信用できる研究機関が俺には彼女の所しか無いからな。」
紅の質問に冗談めかしてそう答える。
「先生の立場ですと下手な所に任せる訳にもいきませんからね。黒川教授なら先生と長い関係ですし、信用出来ますから安心ですね。」
「…。まあ、そう言う事だ。」
彼女に悪気は無いのは分かっているが、客観的に見た時の自分の友好関係の狭さに気付かされて勝手に軽く落ち込む。
しょうがないではないか、高卒で上京した瞬間にダンジョンの発生に巻き込まれ、脱出後も中々に長い間救助活動やダンジョン攻略等の最前線で働き詰めだったのだ。
地元もダンジョンの発生で此方からも彼方からも連絡をする余裕はなし、そんな中で家族とは連絡が取れたのが救いではある。
そんなこんなでダンジョン脱出後、友好関係を広げる暇もタイミングもほぼ無かった為こんな結果になっているが、そんな状況で関りを持てる数少ない友人達には感謝しかない。
俺が感情を浮き沈みさせていると、俺達がこのフロアに入って来た隠し通路から複数の気配を感じ、人の足音が聞こえて来た。
座った状態から立ち上がり少し警戒するが、どうやら第二部隊が到着したようで、ダンジョン対策部隊の装備をした一団が通路から入って来た。
「ご苦労、おそらくこれで最後だと思う。一応本部に連絡を入れて確認しておいてくれ。それとこの1人は俺が直接本部に護送するから残りの2人を頼んでもいいか?」
「ハッ!了解しました!任務ご苦労様ですッ!」
敬礼しながらこの部隊の指揮を任されていると思われる者に話しかけると、直立不動の態勢で敬礼を返してくれる。
第二部隊と合流も完了し、今回の救助活動はこのまま無事に終わりそうだ。




