元教え子 東 紅 34
その動きを確認し、俺は右手に強めに魔力を纏った。
纏った魔力を槍状に変形させ、回転を加えて投げつける。
狙い違わず、奴の左上半身を狙って投げた魔力の槍が風を切り飛んでいく。
「ボァaoaaa!?」
魔力による防壁を貫いた槍が命中し、モンスターの左上半身部分の一部が千切れ飛ぶ。
自身の防御を突破されたのに驚いたのか、叫び声に驚きが混ざっているように聞こえる。
「”焦却弾„!」
飛んだ肉片が湿った音を立てて地面に落ちると同時に、紅がその肉片を焼き尽くす。
予想通りモンスターは再生することが出来ていない様で、苦悶の声を漏らしながら身悶えさせている。
「後何発撃てそうだ?」
「はい!後8発程は余裕を持って打てます!」
中々に魔力消費の高いこの業をその数打てるのは彼女の才能もさることながら、卒業後かなりの努力をしたのだろう。
突入前に車で目を通した過去の資料よりも随分と保有魔力量を増やした様子。
教え子の成長に思わず頬が緩む。
「後4発撃ったら一度魔力を補充するために大きく下がれ。5発毎に補充のローテーションで確実に削るぞ。」
「了解です!」
再度右手に魔力を纏い槍を作り、次はモンスターの右上半身を目掛け放つ。
俺の動きに気付いたのか、モンスターが先程よりも高密度の魔力で防壁を張り、触手を2本生やして交差させて防御態勢を取る。
障壁は突破出来たが触手を千切る程度で、本体には到達出来ずに魔力が霧散する。
次はもう少し魔力を込めても大丈夫そうだ。
千切れた触手を紅が焼失させたのを確認し、先程よりも多少多めに魔力を込めて槍を作り投げる。
先程と同じ様に防御しようとしたモンスターの守りを突破し肉が飛び、紅に焼かれる。
補充の際に多少反撃はあれど、彼女が戦闘に加わってからはほぼ一方的な展開となっている。
モンスターの体積も随分と減っている様に見える。
2度目の補充のタイミングで遂に要救助者がモンスターの体から見えて来たのだった。




