元教え子 東 紅 33
ならば問題ないかと自問自答を終わらせ、紅に作戦を伝える。
モンスターの上部を指差しながら作戦の大まかな流れを共有する。
「いいか東、この作戦の成否は君の動きにかかっている。私が砕いた奴の肉を塵も残さず焼失させて欲しい。もう気付いていると思うが要救助者がいる、モンスター本体に君は直接攻撃を避けるんだ。調子は大丈夫か?」
「了解です。今ならいつも以上に火力が出そうな程調子もいいです。」
「なら始めようか。」
言うが早いか、自身の結晶装備を展開し構える姿は正に気炎万丈といった様子。
目に闘志の炎が幻視しそうな程だ。
心なしか、剣の炎も何時もより燃え盛っている様に見える。
紅が復活して驚いたのか様子見なのか分からないが、じっとしていたモンスターが動き出した。
何度も繰り返した左右の触手攻撃だ。
前に出て迎え撃つ。
「右から切り飛ばす。」
「了解です。」
短いやり取り。
両手に魔力を纏い手を手刀の形に。
右手には柔軟で、大きく撓る飛翔する刃。
左手には堅牢で、細かく早く振動する刃。
「フッ!」
息を短く吐き、右側から迫りくる触手に右手を振り下ろす。
風を切る音と共に射出された魔力の刃は、右手側から此方へ向かっていたモンスターの触手を中程から断ち、壁に傷跡を残し消える。
「”焦却弾„!」
断たれた触手を紅が言霊で発生させた炎が焼失させる。
肉の焼け焦げる臭いが鼻に届くとほぼ同じタイミングで、残りの左側の触手が襲いかかってくる。
その触手を左手の刃で下からかち上げる様に切断する。
先程と同じ程度の大きさの肉塊が地面に落ち、間髪入れずに紅が焼失させる。
「Gyuoァぁaaaa!」
怒りか痛みか驚きか、モンスターが叫び声を上げその巨体を揺らす。
反射的になのか、鈍重な動きとは裏腹に驚くべき速さで魔力を展開し防御姿勢に入る。
その動きを確認し、俺は右手に強めに魔力を纏った。




