元教え子 東 紅 32
出て来た魔力球の中にはどす黒く、粘性を感じる魔力が内包されていた。
精神汚染の質の異様さに少し驚きながらも、手早くも慎重に引きずり出していく。
焦って後遺症が残ってしまったら後味が悪いし、彼女に申し訳ない。
「きrい…。あたたk.ⅰ…。」
施術途中彼女から多少聞き取れる言葉が漏れる。
強張った体も落ち着いたのか、弛緩してリラックスしている様だ。
その後すぐ無事に取り出し終える。
取り敢えず一安心、この様子なら直に目を覚ます事だろう。
「Gyuァぁaaa!」
「おっと。また相手してやるから慌てんなよ。」
ホッとしたのも束の間、防御態勢を解いたモンスターがまた触手を使った攻撃を繰り出してくる。
紅の治療に集中していた為、少し反応が遅れてしまった。
見てから回避は余裕だったが、反撃をし損ねてしまった。
「私もまだまだだな…。」
「先生がまだまだなら私は何ですかね?」
軽い溜息と共にそう呟くと脇に抱えた紅からそう返ってきた。
「卒業したばかりでまだ若い、伸びしろも含めて雛と言った所かな。」
「くっ、分かっていましたが子ども扱いですかっ…。」
軽口をたたき合いながら人の腕の中で悔しそうに拳を握る紅。
「そろそろ立てるか?というか立てるだろう?」
「先生の腕の中は中々に居心地よかったのですがしょうがないですね。」
「急に元気だな…。」
やれやれと手を上げる紅を降ろし、正面のモンスターを見据える。
重度の精神汚染を受けたのだ、その原因に恐怖しても仕方ない。
心配になり声を掛ける。
「かなり重度の精神汚染を受けたようだが大丈夫か?」
「はい!むしろよくも先生の前で恥を搔かせてくれたなと怒り心頭です!助けてくれてありがとうございます!」
「お、おう。それならいいんだが。」
どうやら副作用も後遺症もなく恐怖どころかやる気が満ち満ちている様子。
溌溂しすぎて怖いくらいだがそれほど腹に据えかねた様だ。
ならば問題ないかと自問自答を終わらせ、紅に作戦を伝える。




