元教え子 東 紅 31
その魔力を指から彼女の脳内にある魔力視野に直接接続させた。
魔力視野はダンジョン発生後の研究で発見された六番目の感覚であり、その感覚を司っている脳の一部でもある。
その感覚が強いほどより遠くの魔力を探れたり、見た者の魔力保有量の多さを正確に測る等、様々な事が出来る様になる。
基本的にこの感覚は位が初めて上がった時に発現し、その強さは個人差はあるが、発現すればかなり大変だが鍛える事も出来る。
適合者の中には初めからその感覚に高い適性を持ち、魔力を見る事で嘘を見抜いたり、その人の本質を見抜くといった一種の読心術の様な業を確立させた人もいる。
今回俺がやった事はその魔力視野に直接俺の魔力を接続させ、精神汚染を無理矢理洗い流す方法であり、過去にこの方法で重度の精神汚染に晒され廃人状態になった者が回復した事例もある。
だがその事例の後、軽度の精神汚染をした人に研究機関の者が同じ方法で施術した結果、逆に廃人になってしまったという事故が起こった。
それ以来その方法の成功率を上げるべく研究者が頑張っているが、今の所分かった事は相当精密な魔力操作が必要な事と、治療する者の精神性、治療を受ける者の耐性等 中々にハードルが高いのが現実になっている。
では何故そんな成功率の低い方法を試したのか。
それは俺が過去に精神汚染を回復させた実績があるため、魔力操作は問題ない事がひとつ。
それと紅の高い精神耐性を信頼しているからだ。
接続させた俺の魔力を彼女の魔力視野に馴染ませる様に覆う。
今の所は拒絶するような反応はない。
そこから魔力の質を変え、吸着の性質を帯びさせる。
細かい調整は必要だが、ここまで出来れば後は接続した魔力をそのまま引き抜いてしまうだけだ。
少し集中力は必要だがさほど難しい事ではない。
「ぅぁ…ぅ。」
引き抜く途中で紅が身じろぎしながら小さな呻き声を漏らす。
「頑張れ、もう少しの辛抱だぞ…。よし出たな。」
紅の状態と、引き抜く際になかなかの抵抗を感じていたので予想はしていた。
出て来た魔力球の中にはどす黒く、粘性を感じる魔力が内包されていた。




