ギルド内の陰謀
只野 優人の独白 ⅩⅥ
俺の炊き出しはすぐに政府の耳に入る事になった。
気付いた時には各機関のお偉いさんが並ぶ場所で話をさせられ、帰って来れた経緯やどう過ごしていたか等洗いざらい聞き出そうとして来た。
俺は一部情報を隠した。
その時何故そうしたのかは分からないが、結果的に正解だったと思う。
政府の人間や警察が言うには俺がいた場所。
世間ではダンジョンと呼ばれ、俺と同じ様にダンジョンの発生に巻き込まれた人が帰ってきたという報告は無いという。
あんなところに生身で放り出されて生き残るのは困難だろう。
俺は本当に運が良かったのだと思う。
何故炊き出しをしているのかという質問もあった。
彼等の身なりを見る。
困窮していた人々と比べて随分と健康状態が良さそうだ。
この部分も情報を隠した原因の1つかもしれない。
「困っている人達がいたから。」
俺は質問にそう簡潔に答えた。
その後、政府は俺を前面に押し出し始めた。
建前としては唯一の生還者として民衆の希望。
無事だったテレビやラジオで連日取り上げられ、当時の俺はそれで被害に遇った人達が少しでも救われるなら良いと思っていた。
しかし、実態は何も出来ない政府の人間達の隠れ蓑。
自分達の保身のために俺を矢面に立たせているだけだった。
こうしている間にも民間人の生活は困窮していき、救える命も救えなくなって行く。
俺は考えた。
人間が生きる上で大事な衣・食・住。
衣はまだ残っている物があるため何とかなる。
食も自衛隊や警察の人で有志を集い、ダンジョンの浅い層に潜れる人材を確保したため多少の改善が見られた。
この際手柄に目がくらんだ一部の者が勝手に潜って帰って来ないといったケースも発生した。
なんとも悲しい話だ…。
そして現状一番必要なもの。
それは生活に欠かせない電気だ。
今は節電や計画停電で何とか持たせている状態だが、どうやら電気を生み出す施設の燃料が逼迫した状況になっているらしい。
外国からの輸送が無くなっているんだ、資源の乏しい日本ではそうなってしまうだろう。
どうしたものかと考えながら歩いていた時、俺は運よく1人天才と遭遇する。
どこか落ち込んだ様子の少女。
風が吹き飛び散った書類を集める彼女を手伝った。
それが俺と、後にダンジョン研究の第一人者と呼ばれる黒川 百合との出会いだった。




