元教え子 東 紅 26
一抹の不安と疑惑を抱え、俺達は次の扉に向かうのだった。
正面奥の扉以外を捜索した結果。
何度かモンスターとの戦闘もありながら、リストに載っていて正規の手続きをした行方不明を5名。
行方不明になっていたと思われる未手続の者が6名見つかった。
全員意識は無く、案の定というか何と言うか、全員が結晶装備を所持していなかった。
それと、申請のあった獅子の星の残りのメンバーも見つかっていない。
我々が潜る前に確認した際にダンジョンから帰還したと言う情報も来ていない。
この先で見つかればいいが、もし仮に秘密裏にダンジョンを脱出し、素材等を秘密裏に持ち帰っているとなると脱税扱いになり、発覚すればその組織にとってかなりマイナスなる。
更にもし彼らが倒れた者達の結晶装備を剥いでるとなると目的次第では重罪で、遺品として回収し政府に報告すればいいのだが、着服しようものなら少なくとも組織解体の憂き目に遭うだろう。
これはもしもの話で、最悪を想定してのことであり、残りのメンバーもこの先にいるかもしれないし、善意で回収して行ったかもしれない。
…それなりに大きい組織だ、その様な愚行に走ってない事を願う。
それに本来の目的であるお孫さん達がまだ見つかっていないし、第二部隊もまだ到着していない。
ただでさえ休日出勤なのにこれ以上厄介事を持ち込まないでくれと言うのが正直な感想だ。
正面奥の扉の前に立つ、今までの扉と違い華美な装飾の施されたそれはここに何かしら重要な物がある事を期待させる。
現にこの扉の先から巨大な気配と魔力を感じる。
紅もその気配を感じ取ってか、その奇麗な顔の表情に緊張と不安が混ざっている。
「分かっていると思うが、この先に少なくとも今回の件の手掛り、もしくは原因があるだろう。更に奥があるとなると一旦引き返すと言う選択肢もある。とりあえず装備と息を整えて先に進むぞ。」
「はい、魔力ストックを補充します。…少し時間を下さい。」
「あぁ、俺も今の内に補給を済ませておくよ。」
少し会話を挟み、彼女は魔力結晶を取り出し補充し始めた。
強張った表情の彼女を見ながら、俺はウエストバッグからエネルギーゼリーの入ったアルミパウチを取り出し口を付けた。




