カルト集団本部鎮圧戦 29 vs無貌の悪魔
落とした首がこちらを見て笑っていた。
黒い影のような風貌にそこだけくり抜かれたような空洞。
そこがこの存在の口になるのだろうか、少なくとも声はそこから聞こえる。
「全く酷いですね。まだ話している途中だというのに。」
そう言うと奴は落ちた首を拾い上げるような動作に移る。
俺はすかさずナイフを振り下ろし、今度は奴の右腕を切り飛ばした。
「話を聞かない人ですね。」
それでも奴の余裕の態度は崩れない。
俺の攻撃も意に介していないかの様だ。
次は胴を切り刻む勢いでナイフを振るう。
バラバラになり地に沈む奴の体。
しかし次の瞬間には黒い影の様な体は混ざり合い、元の姿に戻ってしまっていた。
何とも不思議な奴だ。
「自己紹介がまだでしたね。私はこの島国を治める悪魔、無貌の悪魔と申します。人間が分かり易く言うところのダンジョンの王的存在。魔王といったところでしょうか?」
「ぺらぺらとよくしゃべるな。」
「ええ、今までばれない様にやってきましたからね!フラストレーションが溜まっているのですよ!いやはや出てくるのに苦労しましたよ。多くの人間の命を吸ってなおここまで時間と労力がかかりましたからね!」
舞台じみた動きで嬉しさを隠さない様子の無貌の悪魔。
まるで邪悪そのものが動いて喋っているような感覚だ、不快感がどんどんと膨らんでいく。
「命を吸うとは?」
「その言葉通りですよ!昔に起こしたダンジョンの隆起!あれはかなりの力を使いましたが素晴らしい結果をもたらしてくれました!提案してくれた紅蓮の悪魔には感謝しなくては!そして人間の欲深さ!大変素晴らしい!これがなければもっと時間がかかるところでしたよ!いやはや人間とはかくも強欲で自分勝手な生き物ですね。」
この口ぶりから、12年前のダンジョン災害を引き起こしたのはこいつらしい。
しかも言葉通りだと奴だけでなく、他にも関係するものがいるようだ。
「これならこの島国ではなく、もっと広い国を選んでおけば良かった。まぁ後悔しても仕方ありませんが…。」
成程、どうやら俺はかなり重要な話を聞いたようだ。
先ほどの負の感情とは違うモノが俺を突き動かそうと膨れ上がる。
余計負けるわけにはいかなくなったな。
俺は自らの結晶装備である黒いナイフを力強く握りなおした。




