元教え子 東 紅 18
激しい破壊音と砂煙と共に、他の扉と同じサイズの入り口が現れた。
砂煙が晴れるのを確認し中を覗く。
そこには真っ直ぐに続く通路があった。
通路の左右に扉が複数設置され、奥の方にはこれまでとは違い、装飾の施された扉が佇んでいる。
「手前の部屋から探索するぞ。」
「了解です。」
俺の言葉に紅から短い返事が返ってくる。
入口から一歩踏み込んだ瞬間とてつもない違和感に襲われる。
思考に霧がかかる。
まるでこの先には絶望しかないとでも言う風に、ネガティブな感情が沸き上がる。
誰かが囁く。
思い出せ、お前のやってる事に意味はない、全くの無駄であると。
囁きは提案する。
無駄に生きる意味はないと、ここで膝を折り、起こる事に身をゆだねろと。
ガラガラの男女どちらとも区別のつかない声に急に囁かれて、頭がおかしくなりそうだ。
頭を振って謎の声を振り払う。
振り返ってみると、紅が焦点の定まってない状態で立ち尽くしていた。
如何やらこの声が聞こえたのは俺だけではない様だ。
彼女の目の前で手を叩くとビクリと反応し、顔を真っ青にして不安そうに口を開いた。
「先生、今の聞こえましたか?まるで今までの事を全否定するような、この世の全てを恨むような、そんな感情の不気味な声が聞こえました。」
「あぁ、どうやらこの先には相当厄介なモンスターがいるらしい。このタイプは初めてか?」
「…はい。恥ずかしながら精神干渉をしてくるタイプのモンスターは初めて遭遇しました。授業では教わっていましたがここまでとは…。」
相当堪えているのか未だに顔は青く、肩も震えている。
しかし、初遭遇でこれなら彼女は中々に高い精神耐性を持ってると言えるだろう。
遠隔からの精神汚染、この手のモンスターがいると救助難易度は途端に跳ね上がる。
ある程度の精神耐性が無いと耐えられず動けなくなってしまうからだ。
動けないならまだましで、中には発狂して味方に襲い掛かるケースもある。
元々の資質か、何度も体験するしかこの耐性を上げる方法は無く、実力があっても精神汚染のせいで部隊に多大な被害が出るという事態も起こりうる、とても厄介な攻撃だ。
俺は怯える彼女の目見て、安心させるように言った。




