カルト集団ダンジョン事変 19
そして急に泣き出したかと思うと、次の瞬間には崩れ落ちるように五体投地した。
男の急な行動に驚いて怯んでいると、彼は頭を地面にめり込むんじゃないかと思うくらい下げ、表情は見えないが泣いているのだろう。
ぐしゃぐしゃな声で話し始めた。
「ずびまぜんでじだ!何でもじまずのでいのぢばがりはおだすげぐだざい!もうあの爆はづは勘弁じでくだざいぃ。」
「えぇ…。」
どうやら俺が足止め用に放っていた魔力は彼にとってかなり堪えたらしい。
彼はアレを放っていたのが俺だと分かっているようだが、その怯え方は異常だと思うんだが…。
大体あそこで俺がああしなければ彼が指示を出していたモンスターは確実に隊員達の命を脅かしただろうし、彼らが大怪我をさせられた事実がある。
まあ本人がこう言っているんだし洗いざらい今回の顛末を聞くとしよう。
次いでに組織の情報が手に入れば万々歳だ。
取り敢えずこの男を連れてダンジョンから出るとしよう。
この様子ではまともに会話が出来るとは思えないし、この男が言っていた増援の事も気がかりだ。
一度隊員達と合流し本部に戻り、情報取集は男の身柄を施設に預けて落ち着いてからになるだろう。
無言の俺に不安になったのか、男の震えが先程よりも激しくなっている様に見える。
見ているこっちがいたたまれなくなるくらいで、このままでは涙以外の液体もでてきそうな勢いだ。
「大人しくしていれば悪いようにはしないし命も保障する。だから少し落ち着いてくれ。」
「…。」
「…大丈夫か?」
男からの返事が無い。
疑問に思い肩に触れると力が全く入っていないため、急いで仰向けに寝かせる。
「気絶している…。」
呼吸はしている様なので大丈夫だとは思うが、泡を吹き白目になってしまっている。
俺はこの男を運ばないといけない事になった現実に溜息を吐いた。




