カルト集団ダンジョン事変 12
慎重に歩みを進めつつ何時でも行動を開始出来るよう魔力を動かした。
慎重に近づき白装束との距離はもう手が届きそうな距離である。
白装束はこちらに全く気付いて無いのか、先程同様待たされている事への愚痴を漏らし続けている。
曰く、本来ならここに自分がいること自体がおかしい。
本部で待つだけの仕事のはずだった。
護衛の為にサソリ型のモンスターを呼んだのも疲れた。
何でこんなに時間がかかっているのか、何時になれば来るのか。
などと俺の存在に気付いていないとはいえ、これだけでもそれなりの事を察せれる情報を吐き出し続けている。
もう少し泳がせようかとも思ったが、話しぶりから増援が向かっている事が分かったのであまりのんびりともしていられない。
増援があるなら入り口で待機している部隊の状況も心配なのでさっさと彼女の身柄を確保させてもらうとしよう。
魔力を足裏で爆発させ、すれ違いざまに腕を伸ばし白装束の布を掴み剥ぎ取る。
油断していた為かそれは簡単に奪い取る事ができ、その容貌が明らかになる。
手入れされて無い様なボサボサの長い茶色の髪に黒い瞳、姿勢が悪く猫背になっている為分かりづらいが、思っていたよりも背丈も高そうだ。
「っ!!?な、なんだ!?」
「「「ッキ゚シャー!!」」」
俺が魔力を使ったからかこの男もサソリ型のモンスターも俺に気付いたようだ。
男は驚きの声をあげ、モンスターは自身の鋏を打ち鳴らしこちらを威嚇して今にも飛び掛かって来そうな勢いだ。
だが遅すぎた。
俺は既に東の身柄を確保し跳ぶ準備を終えている。
布を取ったため元白装束の男の魔力や気配がはっきりと見える。
そしてその魔力が周りのモンスターと繋がっている事も。
どうやらこのモンスター達は目の前の男が操っているという事で間違いは無さそうだ。
ここで処理しておくべきかと悩んだが今は時間が惜しいため早々にこの場を離れる事にしよう。
「お、お前ら!こいつを捕まえろ!」
状況に気付いた男が顔を隠しながらモンスターに指示を出すが、俺はこの場を離脱する準備を既に終えいる。
祭壇を足場に魔力を使って飛び上がる。
俺がいた場所にモンスターが殺到するが、その鋏はむなしく空を切る。
空中に魔力で足場を作り、それを足場にしながら待機させていた隊員達の所へ向かうのだった。




