カルト集団ダンジョン事変 11
俺はサソリの影から祭壇の様子を見て次の行動を決めた。
東が横になっている祭壇の前で落ち着きなく動いている白い影。
ここに来れている時点でかなりの実力者である事は間違いないだろう。
あの白い布には魔力や気配を遮断する効果が有るのか、感知できる情報が何とも曖昧でしっかりとした実力が図り辛い。
第六部隊の者が撮影に成功した例があるため、全員がそうではないのだろうが少なくとも目の前の人物が着ているものはそういった類のアイテムだ。
人数は1人先程から祭壇の方を向き、その前から動かずにいる。
この距離では少し遠くてよく聞こえないが、何やらぶつぶつと呟いている様子。
その間もサソリ型モンスター達は目の前の白装束をじっと見るだけで動かない。
周りの見える範囲すべてのモンスターがそうなので気付いて無いという事は無いだろう…。
何かしらの能力に因るものだろうか。
前例はないが可能性が無いわけではない。
もしくはこのモンスターが見た目に反してすごく大人しい種類なのだろうか?
兎にも角にも今は東の安全確保を第一に努めなければならないだろう。
友達がいない事を嘆いていた部下に出来た大切な友であり、同じ組織に所属する仲間である。
取り敢えず東の身柄を確保した後、出来れば目の前の白装束の正体を暴き、何かしらの情報を確保できれば御の字だろう。
サソリの影から離れ自身の存在を更に希薄にして前に出る。
気付かれてはいない様で、前に出て行ってもモンスターが動く様子はない。
何が切っ掛けで存在を悟られるか分からないため、音も立てないように慎重に距離を詰めていく。
白装束の人物との距離が半分ほどになった時、呟いている言葉が所々聞こえて来た。
「…でこの…がわざわざ。…はいつまで待たせるつもりだ。」
高めの男性の声。
何やら彼はここで待つよう指示を受けているようだ。
声からは苛立ちを感じ、集中力が欠けている様子の為今なら問題なく彼女の確保は出来るだろう。
慎重に歩みを進めつつ何時でも行動を開始出来るよう魔力を動かした。




