カルト集団ダンジョン事変 6
俺はPCにUSBを差し込み中のデータを確認した。
データの確認をしながらお湯が沸くのを待っている竜胆と話していると、廊下の方が何やら騒がしくなっている。
気配と魔力を探ると、どうやら蜂谷がこちらに急いで向かって来ている様子。
彼女は真っ直ぐこちらに向かってくると、ノックもせずに扉を開け放ちこちらに向かってくる。
慌てた様子の蜂谷に驚きつつも彼女の息が整うのを待つ。
「お兄ちゃん!筑波山の廃棄予定ダンジョンに向かった第二部隊の分隊から緊急支援要請!けが人多数で何人か取り残されてるって!」
「第四部隊に連絡して至急救護班を向かわせろ。戦闘部隊で支援に向かえる部隊は?」
「近くの部隊は主戦力が出払っており向かえません。いけそうな部隊は何処も向かうのに時間が掛かります。」
「分かった。蜂谷は追加の情報があり次第竜胆に知らせろ。竜胆はここで待機して各部隊に指示を出してくれ。」
「承知しました。」「了解!」
俺の指示に快く応えながら竜胆は恭しく礼をし、蜂谷は珍しく緊張した面持ちで敬礼をする。
「俺はこの後すぐ現場に行く。連絡の付く者に伝えておいてくれ。」
「承知しました。」
そう言うと竜胆は部屋を出て行き、現場の第二部隊の者に連絡を入れに行ったようだ。
俺も準備のために部屋に設置されたクローゼットを開け、潜行するための装備に着替え始める。
「お兄ちゃん。取り残された人達の中に紅ちゃんもいるって…。」
「…なるほど。それは尚更急がないといけないな。仲がいいみたいだな。」
「うん。友達。」
「それで珍しくあの慌てようだったのか。らしくなくてびっくりしたよ。そりゃそうなる訳だ。」
「うん…。」
出て行く彼女の背中に力はなく落ち込んでいるようだ。
珍しく素直な彼女の様子に相当心配していることが分かる。
本来なら自分で行って助けたいはず、連絡が来た時点で飛び出したかっただろう。
着替えを終え扉を出ると蜂谷が通信端末を両手で握りしめ佇んでいた。
俺は彼女を安心させるように極力笑顔を作って語り掛ける。
「安心しろ、最善を尽くしてくる。犠牲者なんて出しはしない。竜胆と協力して情報の整理を頼んだ。」
「了解です!よろしくお願いします!」
その返事を聞くと俺は正面の窓を開け、体を外に出し窓枠に足を掛ける。
魔力で窓枠の強度を高めて蹴り、俺は空に飛び出した。




