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水面下で動くカルトの影

只野(ただの)が第二部隊と訓練を始める少し前、とあるダンジョンの中層付近。

そこに全身を白い布で包んだ異様の集団が集まっていた。


このダンジョンは資源も湧くモンスターの素材も然程価値は無く、それなのにモンスターは頑強で倒しにくいという人気の無いダンジョンになっている。

それ故管理するダンジョン対策本部はこのダンジョンの封鎖を決定し、時期をみて完全攻略しこのダンジョンを無くす話も出ている。


普段は入り口をガードフェンスに塞がれて、立ち入り禁止の立て札がたてられている。

今そのフェンスは無理矢理開けられたのか無残にも壊され、暗い洞をのぞかせている。


「ついにこの時が来た。愚かな者達にダンジョンの偉大さを知らしめるこの時が!」


円陣を組んだ集団の中央に立つ者が興奮した様子で右拳を掲げ声をあげる。

周りにいる者達もそれに同調する様に歓喜の声をあげる。


声からして初老の男性と思われる中央にいる男は左手に黒い球体を持ち、それは禍々しい光を放っている。

そして次の瞬間、黒いもやが球体からあふれ出してくる。


「おお!ついに器が満たされたぞ!皆さん、器に魔力を!」


男がそう言うと周りの人影が腕を伸ばし、球体に魔力を注いでいく。

しばらくそうしていると、魔力を出し過ぎたのか苦しそうな呼吸音と共に1人また1人と倒れて行き、残るのは中央にいた男1人になる。


「皆さんお疲れ様でした。貴方たちの献身はきっとこの世界をよくすることでしょう。今は休みなさい。そして体調が整い次第我々の作戦を開始します。」


聞こえているかは分からないだろうが男は周りの者達に言い聞かせるようにそう呟く。

その声は隠しきれない歓喜と狂気を孕みダンジョンの闇に溶けていく。


「ダンジョンの恵みを貪る背信者共よ。その幸福を今の内に噛みしめておくが良い。我々が神罰を下すその日までな。」


先程までの上機嫌とは正反対の憎しみの籠った声がダンジョンに響いた。

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