只野、隊長達のお願い聞いて周るってよ 第二部隊隊長 巌ノ国 義重編 8
去っていく彼の背中を見ながらそんな事を思うのだった。
3日に及ぶ訓練が無事終了し、今俺は義重殿の屋敷でお茶を飲みながら資料を提出し、経過報告をしている。
最終日一部の隊員が無茶な真似をするのではないかと懸念があったが、流石に自制が効いていたらしくそんな事をする者はいなかった。
「以上がこの3日間で行った事ですね。各隊員の出来るようになったことや成長具合は資料の通りです。何かご質問があれば遠慮せずに仰ってください。」
「いやはや驚きましたな。この資料通りに隊員達が成長しているなら普段の訓練はままごとですな。しかし実際に見た所事実のよう。まったく、隊長殿にはいつも驚かされますわい。ふぉふぉふぉ。最強の潜行者という一面だけでなく教育者としても一流という事ですかな?」
「そんな事はありませんよ、私に出来る精一杯をやっているだけです。」
「教育者が泣きますぞい。ふぉっふぉふぉ。」
資料を捲り、驚きながら笑うという器用な事をする義重殿。
この様子ならこの件も無事終了と見ていいだろう。
お茶を一口啜る。
まるで絹の様なするっとした舌触りにほのかな甘みとうま味、絶妙な渋みにキレのある清涼感。
普段あまりお茶を飲まない俺でも高品質なお茶の葉を完璧な淹れ方をしたのだと分かる。
お茶請けには白と茶色の饅頭が用意され、こちらも絶品だ。
蒸し上がりと同時に持って来てくれたのか、まだあたたかい饅頭を一口食べると上品でコクのある優しい甘さが口の中に広がり、小豆の粒の残るほっくりとした食感と、深みのあるコクがたまらない。
茶色の方は黒糖の濃厚な生地と、甘さ控えめの上品なこしあんが絶妙なハーモニーを演出し、一口食べればほっこりとした幸福感に包まれる。
素朴な見た目ながらも素材の良さを最大限に生かした職人の業が光る一品だ。
そしてお茶との相性も抜群ときた。
饅頭の甘さはこの完璧なお茶のうま味を引き出し、お茶もまた饅頭の美味しさを一段上のものへと昇華しているようだ。
この組み合わせは危険だな、際限なく食べてしまえそうだ…。
「ふぉっふぉふぉ。儂のもてなしは気に入っていただけたようですな。」
「ええ、最高です。とてもいい職人さんがいらっしゃるようですね。よろしければ紹介していただけませんか?」
「作った者も喜びますわい。その内紹介する機会がありますからな。その時のお楽しみですわい。」
義重殿が悪戯っぽく笑いなんだか嫌な予感がしたが気にしない事にしよう。
今はこの完璧なお茶と饅頭を堪能しようじゃないか。
義重殿とダンジョンや政治等色々な話をしながらも今日は比較的のんびりと過ぎていく。
こうして俺は無事隊長達のお願いを聞き終えたのだった。




